中国の古典からギリシャ神話、ロシアやポーランドの文学、英国の性心理学、柳田国男、永井荷風……。魯迅の弟で、古今東西の書物を読み続けた文学者・周作人(1885~1967)。読書についての彼の文章を編んだ『周作人読書雑記』全5巻が平凡社東洋文庫で出始めた。既刊は1・2巻、各3564円。中島長文・訳注。
「老年の書」という文章が印象的だ。谷崎潤一郎が、現代の日本には大人や老人の読む文学がほとんどないとして、「青年期から老年期に至るまで、ときどき灯下に繙(ひもと)いては慰安を求め、一生の伴侶として飽きないやうな書物こそ、真の文学」と書いたのに「強く意を同じうし」、こう書く。
「『詩経』特に「国風」、陶淵明の詩は読むといつも面白いが、しかし、読書するのに千年前の古典に求めなければならないというのは、少々寂しいではないか。おそらく近代という時間が短いせいだろうが、本を探すのはまことに難しい」
このとき、周作人52歳。読むということには、限りがない。(石田祐樹)=朝日新聞2018年4月14日掲載
編集部一押し!
- インタビュー 「尾上右近 華麗なる花道」インタビュー カレーと歌舞伎、懐が深いところが似ている 中村さやか
-
- 中江有里の「開け!本の扉。ときどき野球も」 生きるために、変化を恐れない。迷いが消えた福岡伸一「生物と無生物のあいだ」 中江有里の「開け!野球の扉」 #13 中江有里
-
- コラム 三浦しをんさんエッセー集「しんがりで寝ています」 可笑しくも愛しい「日常」伝える 好書好日編集部
- 大好きだった 「七帝柔道記Ⅱ」の執筆で増田俊也さんが助けられた「タッチ」と「SLAM DUNK」 増田俊也
- 小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 【特別版】芥川賞・九段理江さん「芥川賞を獲るコツ、わかりました」 小説家になりたい人が、芥川賞作家になった人に聞いてみた。 清繭子
- インタビュー 鈴木純さんの写真絵本「シロツメクサはともだち」 あなたにはどう見える?身近な植物、五感を使って目を向けてみて 加治佐志津
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社