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「日本のマラソンはなぜダメになったのか」書評 思考力の低下も影響か

評者: 原武史 / 朝⽇新聞掲載:2017年01月22日
日本のマラソンはなぜダメになったのか 日本記録を更新した7人の侍の声を聞け! 宗茂、瀬古利彦、中山竹通、児玉泰介、犬伏孝行、藤田敦史、高岡寿成 (Sports Graphic Number Books) 著者:折山 淑美 出版社:文藝春秋 ジャンル:スポーツ

ISBN: 9784163905662
発売⽇: 2016/11/29
サイズ: 19cm/285p

日本のマラソンはなぜダメになったのか [著]折山淑美

 日本の男子マラソン界は冬の時代が続いている。日本記録は10年以上も更新されていないし、その記録すら世界では70位にも入っていない。かつてお家芸とも呼ばれたマラソンが、なぜここまで凋落(ちょうらく)したのか。本書は宗茂や瀬古利彦ら、日本記録を更新したことのある7人の元ランナーへのインタビューを通して、その理由を探ろうとする。
 多くのランナーが強調しているのが、時代の変化である。幼少期に野山を駆け回るような体験をしなくなり、高度に発達した情報網から逃れられなくなった。つまり先進国に共通する現代の環境が、かえってマラソンの記録を出にくくさせているというのだ。
 瀬古が「マラソンというのは究極のアナログスポーツ」と語るように、どれほど情報網が発達しようが、マラソンでどう勝つかはあくまでも自分自身で考え出さなければならない。そうした思考力の低下もまた影響しているのではないかという読後感が残った。