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「オはオオタカのオ」書評 命と死に対する、じつに深い洞察

評者: 蜂飼耳 / 朝⽇新聞掲載:2016年11月27日
オはオオタカのオ 著者:ヘレン・マクドナルド 出版社:白水社 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784560095096
発売⽇: 2016/09/28
サイズ: 20cm/370p

【サミュエル・ジョンソン賞ノンフィクション部門(2014年)】【コスタ賞伝記部門&年間最優秀賞(2014年)】この鷹が、私を捕らえた−。幼い頃から鷹匠になる夢を抱いて育ち…

オはオオタカのオ [著]ヘレン・マクドナルド

 すばらしいノンフィクション作品だ。著者のヘレン・マクドナルドはケンブリッジ大学で科学史・科学哲学を学んだ女性。父の死によって精神的な危機に直面し、ある日思い立ってオオタカを飼う。少しずつ慣れていくオオタカと著者の距離感。古くからの伝統を持つ鷹(たか)狩りに挑む日々。
 イギリスの作家T・H・ホワイトの『オオタカ』の記述が随所に織り込まれ、本書に奥行きを与えている。著者はそれを批評的に読む。ホワイトの人生に困難と孤独をもたらした子供時代の虐待、サディスティックな性質や同性愛。著者は『オオタカ』を読み直しつつ、鷹狩りの経験を重ねながら、自分自身が変わっていくことを感じる。
 「たとえ想像のなかであれ、人間でないとはどういうことかをひとたび知ることができれば、そのことによって、人はより人間らしくなれるのだということを学んだ」。自然の摂理や命と死に対する、じつに深い洞察に満ちた書だ。