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記憶の万華鏡、骨董品に宿るドラマ

まがいの器〜古道具屋奇譚〜 [作]水木由真

 使い込まれた古道具や骨董(こっとう)品には、何かが宿っている気配がある。長い時間をかけて物に染みつき、にじみ出てくる物語の数々を、謎めいた古道具屋の主人を狂言回しにして描く短編シリーズだ。壺(つぼ)、鏡、ペン、人形、宝石、レコードなど、過去や現在の持ち主の時空を貫くドラマが、多様に展開されていく。
 当初は同人誌として発表され、商業誌に場を移し、足かけ8年にわたって描かれた経緯もあって、著者の強い思いがページに宿っており、テーマの古道具と同様ただならぬ存在感を放っている。初期のエピソードは、短いページ数に語りが詰めこまれて、著者の気持ちが先走っているような印象もあったが、読み進むうちに、そのスタイル自体が魅力になり、この世界にぐいぐいと引きこまれる。読み終えた時には、個々のエピソードが記憶のイメージの万華鏡のように渾然(こんぜん)一体となって輝き、圧倒される思いがした。
 近年、ネット媒体や同人誌市場の拡大により、専業作家以外の描き手にも発表の場が増え、それが商業出版にも波及して多様性をもたらしつつあるようだ。このような個人の息づかいが伝わるような本と出会える機会が、さらに増えていってほしいと思う。=朝日新聞2018年5月5日掲載