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「エレベーター・ミュージック・イン・ジャパン}書評 なぜ、ここまで必要とされたのか

評者: 椹木野衣 / 朝⽇新聞掲載:2018年06月16日
エレベーター・ミュージック・イン・ジャパン 日本のBGMの歴史 著者:田中 雄二 出版社:DU BOOKS ジャンル:芸術・アート

ISBN: 9784866470566
発売⽇: 2018/04/27
サイズ: 21cm/206p

「エレベーター・ミュージック・イン・ジャパン 日本のBGMの歴史」 [著]田中雄二

 書名は欧米の「百貨店のエレベーターで流れていたムード音楽に由来」する。日本では「BGM」と呼んだ方が通りがいい。戦後、国内に持ち込まれたところ爆発的に普及。百貨店はもちろん、ホテルやレストラン、喫茶店や居酒屋、果ては駅のホームでの電車の発着音にまで広がり、日本は「音楽消費国としては世界一」となった。確かに街を歩けばどこかから音楽が流れてこないことはない。改めて気に留めることのなかったその成立の経緯や普及の詳細を辿ったのが本書だ。
 なぜ、ここまで必要とされたのか。実は日本社会へのBGMの定着の時期が、建設ラッシュや工場の騒音が喧しくなった高度経済成長期と被っていたらしい。もともとBGMは騒音への「音のカーテン」としての効果が期待されていた。頼んでもいないBGMを「音の公害」と非難する向きにとっては皮肉なことかもしれない。ディスクガイド、選曲リスト、年表など充実。