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消された愚行の実体に迫る

少国民戦争文化史 著者:山中 恒 出版社:辺境社 ジャンル:児童書・絵本

価格:3672円
ISBN: 9784326950515
発売⽇:
サイズ: 20cm/555p

講談社の戦争絵本、国策童話集、少文協…。戦後、歴史の襞に隠されてきた児童文学作家たちの戦時下の作品を通して、当時の少国民がどのような文化環境に置かれたかを記録する。【「T…

評者:出久根達郎 / 朝⽇新聞掲載:2013年12月08日

少国民戦争文化史 [著]山中恒

 「少国民」とは、第二次大戦中の呼称で、年少の国民のことである。もったいぶった言い方が戦時用語の特色だけど簡単に言えば、少年少女のこと。昭和十二年十一月、大毎小学生新聞・東日小学生新聞が、「少国民愛国歌」の歌詞を募集した。これが少国民という語の使われた最初である。ただし一般化するのは四年後の太平洋戦争になってから。
 本のタイトルに、『少国民の日本史』『少国民の国体読本』『少国民文化大日本史』と少国民がつく。内務省が指導し文部省や陸軍省他が加わって、児童雑誌の規制が始まる。
 たとえばルビの廃止。ルビは児童の目によくないという論法である。実は漢字や漢語優位の偏向ではなかろうか。少国民などという固い造語から、そう思える。
 かくして昭和十六年に「社団法人・日本少国民文化協会」が、翌年には「財団法人・少国民文化協会(少文協)」が結成される。官民一体の少国民文化運動が発足した。運動の実態は謎の部分が多かった。協会員の作家たちが、戦後、口を閉ざしたからである。語られた事柄も真実か否か、容易に判断できない。
 著者は「ボクラ少国民」シリーズで、これまで少文協の果たした役割を追究してきた。本書はその延長線上にある。昭和十九年以降の少文協の内部事情は、未(いま)だに手がかりがないそうだ。そして恐らく今後この問題は論じられることはあるまい、と言う。どのように「少国民」が作られたか。究明することは重要だ。きなくさくなってきた昨今、同じ愚行が繰り返されない為(ため)にも。
 著者のライフワークに対して、心ない悪口を放つ者もいる。戦時中の本を集め、鋏(はさみ)と糊(のり)でまとめただけだ、と。
 少国民図書の内容を紹介してくれただけで偉業である。戦時中の本は集めようとしても集まらない。愚行の「証拠」は消されたから。私たちは氏の著によって、少国民文化の実体を知ることができる。
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 勁草書房・3570円/やまなか・ひさし 31年生まれ。児童読み物・ノンフィクション作家。『戦時児童文学論』など。