「そろそろ左派は〈経済〉を語ろう」書評 忌避するだけでは始まらない
評者: 石川尚文
/ 朝⽇新聞掲載:2018年06月23日
そろそろ左派は〈経済〉を語ろう レフト3.0の政治経済学
著者:ブレイディみかこ
出版社:亜紀書房
ジャンル:経済
ISBN: 9784750515441
発売⽇: 2018/04/25
サイズ: 19cm/315p
そろそろ左派は〈経済〉を語ろう [著]ブレイディみかこ、松尾匡、北田暁大
日本の左派は、経済の話を「汚いこと」と思っていないか。欧州の「反緊縮」運動を紹介してきたブレイディみかこの、こうした問いかけから本書は始まる。
左派も一様とはいえないが、「経済」への忌避感がのぞくことは確かにある。環境破壊の記憶か、バブル崩壊後の清貧志向か。
だが、庶民の暮らしを豊かにするという左派の原点に立ち戻れば「お金」の話は避けて通れない、と著者らは訴える。それも、もっと分配せよというだけでは不十分。需要不足による不景気の解消のためには、金融緩和や財政出動が必要だ、とたたみかける。
それは古い左派への回帰なのか。それとも新しい展望なのか??。鼎談をまとめた本なので明快さの半面やや荒っぽさもあり、疑問が残る読者もいるだろう。
そうだとしても、「いまこそ下部構造を思い出す時」という問題提起は重い。左派を自認する人々の間で、議論がわき起こることを期待したい。