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「消えもの」一筋50年の笑顔咲く 石橋恵三子さん『「徹子の部屋」の花しごと』

写真:飯塚悟

 テレビ業界では番組のセットに飾る花、ドラマやバラエティーで使う食べ物・飲み物を「消えもの」というそうだ。その消えものを扱う係の草分け。半世紀以上も続けてきた。
 特に、放送開始から1万回を超える「徹子の部屋」では、第1回からずっとフラワーアレンジメントを担当している。出演者も視聴者も、飾られる花を楽しみにしているから、黒柳徹子さんは「花は第二のゲストです」と話したことがある。この言葉に、胸が震えるほど感動したという。
 高倉健さんがゲストだった回は忘れられない。健さんの好きな花が「都忘れ」だと聞き、千葉県の房総まで行って100本を調達した。収録後、花束にして健さんに渡した。健さんは1本抜いて、「ありがとう」と言いながら差し出してくれた。そのときの感激たるや!
 「毎回、全力投球。すべてに手抜きしない。誠心誠意。そうしないと、ゲストの方に失礼だから」。ゲストの最近の話題や出演作を調べ、花のイメージを作っていく時間は、このうえなく楽しいという。
 「花びら1枚落とさない」がモットーだ。花が茎や枝にしっかりついている新鮮なものを選び、花同士がぶつからないように注意して生ける。
 中学生のとき、華道部に入ったのが花との出合い。花を通して自分の気持ちを表現できること、見てもらって楽しんでもらうことを知った。派手な花ではなくとも、その花なりの持ち味で表現ができるのが面白かった。20代になって義兄の花屋を手伝うようになり、近くにあった日本教育テレビ(現テレビ朝日)に出入りするようになった。そうこうしているうちに、消えもの係になっていた。
 50年以上、花の精気を浴びてきたからだろうか。装いも話し方も若々しくて華やかだ。「石橋さんご自身が花みたい。いつも人に笑顔を向けるから」と言われることがある。「うれしいですね。花が精いっぱい咲くように、私も一番の笑顔で一日を過ごしたい」
 「花は私の人生そのもの」。今日もスタジオで、心を込めて花を生ける。(西秀治)=朝日新聞2018年06月30日掲載