「あの小説をたべたい」は、好書好日編集部が小説に登場するごはんやおやつを料理し、食べることで、その物語のエッセンスを取り込み、小説の世界観を皆さんと共有する記録です。
記念すべき第1回は、太宰治『斜陽』。戦後、華族の身分を失った一家が没落していく物語です。滅びゆく者たちの哀しくも高貴な美しさが描かれています。
「革命」を食べる
そんな物語の中から、冒頭で主人公のかず子とお母さまが飲んでいたスウプを作ってみました。読んだ人が皆、どんなスウプだろうと思わずにはいられない、あのスウプです。
けさのスウプは、こないだアメリカから配給になった缶詰のグリンピイスを裏ごしして、私がポタージュみたいに作ったもので、……
しかもこのスウプ、「ポタージュみたい」とあるものの、かず子たちはおにぎりと一緒に食べています。果たして洋風なスウプがごはんと合うのか……。
そこで閃いたのが白だしです。白だしと生クリームの組み合わせは、いわば「革命」のようなもの。
そんなことを考えたら、またさらに閃きが! 愛人との間にできた子を私生児として一人で育てていく覚悟をしたかず子。その行為も、時代背景を考えると「革命」のようなものです。
このグリンピイスのスウプは、「人間は恋と革命のために生まれて来たのだ」という言葉どおり、恋と革命の人生を選んだ彼女にふさわしいスウプだったのかもしれません。
スウプのお味はというと、そこは非革命的で、意外にもごはんによく合いました。