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巡り巡る皇帝とその仲間たち 津村記久子さんが出会ったゲーム「ロマンシング サガ2」

© 1993,2010,2016 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.Planned & Developed by ArtePiazza
© 1993,2010,2016 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.Planned & Developed by ArtePiazza

 高校生の自分がやっていたことでよく思い出すのが、高三の春休みにエコーベリーというバンドの曲を聴きながら、起きてからから夜中までだらだら「ロマンシング サガ3」をやっていたことだった。いや部活も二つしてたし、友達ともよく遊んでいたので、それだけじゃないだろうとも思うのだけれど、高校は終わったから時間はあるしでも大学には行きたくないしという、ああいう決定的な過渡期はもう人生で存在しないんじゃないかと思う。今は「寝る」とか「スマホ」とか「テレビ」とか「読書」とか、いろいろな時間の過ごし方がある。

 なぜロマサガ3をやっていたのかというと、たぶん八人も主人公がいるから八回違う物語をプレイできるという回数的なものだと思う。初代プレイステーションを買わなかったので、スーパーファミコンで発売された範囲内のロマサガシリーズしかやっていないのだけれど、もうそれで充分だというぐらいどれも個性の強いRPGだった。すさまじくシビアかつ、フリーシナリオという名のほったらかしでありながら、あまりにも想像の余地のある理不尽なストーリーで今も異様な存在感を放つ「1」、それよりはだいぶ緩和されたけれども、ぞうやゆきだるまやロブスターを仲間にできるというめちゃくちゃさに加えて、終盤で大切に育てたキャラクターが引っこ抜かれた記憶が今もトラウマの「3」に挟まれて、わたしがいちばん好きだったのは異色ずくめの「2」だ。

 簡単に言うと、小国の皇帝が主人公で、各地のモンスターを討伐しながら世界統一を目指しつつ、ラスボス七英雄と戦うという内容なのだが、事業は一代で成し遂げられるものではなく、主人公である皇帝は代替わりする。しかも三代目からは、ゲームの進行と共に協力するようになる各地のさまざまなクラスの人々からランダムに候補が出され、その中から選びつつ、能力を継承してゆくという斬新なものだった。四人仲間にできるクラスは、剣が得意な者、斧が得意な者、術が得意な者など、それぞれに強い偏りがあり、基本的には得意なことを戦闘でやらせて技術を伸ばしていく。皇帝のみが、その技術を代替わりしながら蓄積できる。

 それにしても、原則ある皇帝の代でキャラクターを一度パーティに組み込むとその皇帝の代が終わるまで外すことができない(一代のうちにパーティの組み替えが不可能)、キャラクターを外せるとしたらLP(ライフポイント。HPとは別の概念で、戦闘不能=死ねる回数)が尽きた後、そして難しい戦闘、と自分にとっては厳しいゲームだった。それでもシステムは奥深く、毎回選出する皇帝を変えながら、何度でも遊べる。最初は友人から借りたソフトだったけれども、社会人になってから購入し直してずっと遊んでいた。

 シビアな分、このゲームをしているといろいろなことを考える。このキャラクターはこの皇帝の代で生き残っても、LPが3とかなら後々の人生に支障が出るんだろうかとか、そういう場合は労災などが降りるんだろうかとか、全滅したら強制的に皇帝が代わり、それまで遊んでいたパーティは消滅するのだが、遺骸はだれが引き取りに来るのかとか、失踪扱いなのかとか。そういう細かいことは抜きにしても、単に仲間にしたい強いクラスや自分が使いやすいクラスについて考えているだけでも充分に楽しい。すべてのクラスを使ってみるも良し、自分の得意なことだけでクリアを目指すも良し、百人いれば百通りの個性的な遊び方がある。

 この文章を書くためにスマートフォン版を購入してやり始めてみたのだが、やはり本当に厳しい。昔より格段に下手になっていて、全滅も一度経験した。それでもあの、何回でも遊べていつまでも考えられるロマサガ2が手の中に戻ってきたのだと思うとうきうきする。