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「熱海の奇跡 いかにして活気を取り戻したのか」 地元住民が楽しめる街、外からも人が

『熱海の奇跡 いかにして活気を取り戻したのか』 [著]市来広一郎

 観光客が戻り、V字回復を果たした熱海。その舞台裏で「熱海再生」に情熱を注いだ著者の11年間の奮闘記だ。
 熱海の生まれ。バブル崩壊後、数年で街が廃虚のようになっていく姿を目の当たりにした。進学等で地元を離れたが、「熱海をなんとかしたい」と2007年、28歳でUターン。一人で行動を開始した。
 「地元の人が地元を楽しむツアー」を企画し、大好評を博すが収益には結びつかず。持続可能な取り組みには「稼ぐ」ことが必要だと感じたとき、「リノベーションまちづくり」という手法と出あう。
 一定エリアで遊休資産の空き店舗を活用し、新しい発想を持った世代が新しい価値を生み出し、活性化する。地元の若手経営者と「まちづくり会社」を設立すると、シャッター街と化した熱海銀座で、カフェ、ゲストハウス、シェアオフィスを次々開業した。
 「熱海銀座で何か面白いことが起こり始めている」。そんな声とともに、地元の人々が集まり始める。空き店舗に雑貨店や飲食のテナントが次々入り、かつての沈滞した空気は一変していった。
 住民自らが生活を楽しめる街を目指すことで外からも人がやってくる。観光地活性化の一つのモデルが示される。=朝日新聞2018年7月21日掲載