1. HOME
  2. 書評
  3. 「新薬の狩人たち」書評 「気が滅入るほど困難」な探索

「新薬の狩人たち」書評 「気が滅入るほど困難」な探索

評者: 石川尚文 / 朝⽇新聞掲載:2018年08月04日
新薬の狩人たち 成功率0.1%の探求 著者:ドナルド・R.キルシュ 出版社:早川書房 ジャンル:健康・家庭医学

ISBN: 9784152097729
発売⽇: 2018/06/05
サイズ: 20cm/318p

新薬の狩人たち 成功率0.1%の探求 [著]ドナルド・R・キルシュ、オギ オーガス

 薬をめぐるニュースには大きな数字が飛び交う。3500万円もかかる薬が登場したり、7兆円も投じる企業買収が合意されたり。
 なぜ薬は高いのか。そんな疑問に、本書は端的に答える。新しい薬の探索は「気が滅入るほど困難」だから。そしてその本質は先史時代から現代まで変わっていないというのである。
 もちろん、探索の対象や製造方法は広がってきた。植物の成分、合成化学が生み出す物質、土壌の微生物、動物の体内でつくられる物質……。新たな分野で新薬が見つかると「狩人」たちが群がり、しばらくすると成果が枯渇する。その繰り返しなのだという。
 著者もその狩人の一人。自身の体験を含め、創薬をめぐる劇的なエピソードや個性的な人物像が楽しい。
 一方、副作用で「命を奪う薬」が生まれた負の歴史も紹介。抗菌薬のように病気を一気に治せる薬ほど、もうからないので企業の開発意欲がそがれるといった問題点にもふれている。