「THE ALFEE(ジ・アルフィー)」のリーダー高見沢俊彦さん(64)が、初の小説『音叉(おんさ)』(文芸春秋)を出した。バンドでプロデビューを目指す大学生の葛藤や、恋模様を描く青春小説だ。
読書好きの早熟な少年だった。「実は、作家になるのが夢だったんです」。教師だった父や年の離れた兄の影響で、中高生の頃からドストエフスキーやトルストイを読んでいた。「オール讀物」に寄せたエッセーがきっかけで、執筆のオファーが舞い込んだ。還暦を過ぎ、夢がかなった。
小説を執筆するとアルフィーのメンバーに打ち明けても、驚きはなかったという。「いつか書くと思っていたって言うんですよ。お前のギターケースには、弦の代わりに本が入っていたって」
「髙見澤俊彦」の名で執筆した今作は、学生運動、ロック喫茶、ディスコ、ロンドンブーツなど、若者文化が花開いた1970年代の風景を活写する。人間関係にネットは介在せず、ギターのチューニングに音叉を使う。そんなアナログな時代だ。「当時は高校生。不便だったけど、密な青春時代だった。改めて振り返ると面白いと思った」
バンドは今年で結成45周年を迎えたが、音楽を仕事にするつもりはなかったと語る。「違う人生を45年生きていたのかな。人生をリセットできたかも。執筆はこれで終わりではなく、始まりです」(宮田裕介)=朝日新聞2018年08月22日掲載
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