エネルギッシュな「凄玉」の魅力
僕が書店員で、この本のPRをするとしたらこう書きます。「政治の歴史も政治家も知らなくていい。政界でのしあがったエネルギッシュなおじさんたちから、元気をもらえます」
主に1980年代、90年代の自民党政治家の立ち回りや振る舞いを、新聞記者として間近に見てきた著者が生き生きと描いている。豪傑伝ですね。
例えば、中曽根康弘さん。鈴木善幸内閣で行政管理庁長官に押し込められたが「土光臨調」という大舞台をつくり、「行政改革」という大看板を手に入れた。それが政権獲得につながった。田中角栄さんの、「何かの時に『田中だけはダメ』と言わせない。そうした『広大な中間地帯』をつくる」という言葉は味わい深い。竹下登さんはとぼけているようで、実は刃(やいば)を隠し持っている。田中六助さんや山中貞則さんといった「名脇役」たちもキャラクターが濃い。
善玉とか悪玉というより「凄玉(すごだま)」の魅力。子供のころから、政界をやじ馬的に見てきた僕にはたまらない。この本を見つけたときは、よだれが出そうでした。裏テーマは「今はこんな人たち、いないでしょ?」だと思います。こんなエネルギッシュな人たちが、どうしたらもう一度、国政に出てこられるのか。現在の政治システムも考えさせられる一冊です。(聞き手・西秀治、写真・ワタナベエンターテインメント提供)=朝日新聞2018年9月1日掲載