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住民の生涯消費つかみ 利益に紐つけ 東浦亮典「私鉄3.0 沿線人気No.1東急電鉄の戦略的ブランディング」

 高齢化とともに都心回帰が進む中、今後は郊外にも〝限界集落化〟する町が出る怖れがある。郊外に暮らす人にとっては、沿線鉄道会社の将来戦略は死活問題である。
 本書では東京圏で「人気No.1」という東急電鉄の現役執行役員が「私鉄3・0」というキーワードで戦略を解く。
 「1・0」は、鉄道敷設で郊外を開発し、家を売るモデル。ローンを負ったお父さんが電車通勤し、家族が東急百貨店やストアで買い物するという、2極の囲い込み型だ。
 それを更新する「2・0」は、郊外と都心の中間に業務地を設けて「職住近接のワーク&ライフスタイルを確立」すること。東急では二子玉川に超高層ビルを建て、そこに楽天の本社を呼び込むことで、2極を3極に増やした。
 「3・0」は何かというと、全社をあげて沿線住民や在勤者の行動、購買履歴を把握し、プラットフォーム化して、利益に紐づけていくこと。つまり鉄道会社の「GAFA」化だ。
 いずれにしても、いかに沿線住民の生涯消費を丸ごと吸い上げるかが、腕の見せどころ。住民とウィンウィンの関係になるには、高いブランド力が必須で、その点、東急のセンサーは敏感である。=朝日新聞2019年2月9日掲載