プロのYouTuber(ユーチューバー)の「水溜(みずたま)りボンド」(トミーさんとカンタさん)の二人が表紙になったQJ(クイックジャパン)が異例の増刷がかかっている。YouTuberと一括(ひとくく)りにしないで欲しい。YouTube(ユーチューブ)にもプロのYouTuberとそうでない人がいる。サッカーでもバスケットでも野球でもそうであるように。で、この二人はトッププロだ。
どの動画も、極力世界を小さくして、コンビの「関係性」やキャラクターに注目がいく。少し見るたびにそれぞれの個性や表情を知るところとなり、3日目くらいからはもう「かわいい!」ってなる。そしてそれを演出するために、非常に緻密(ちみつ)なロジックの組み立てと工夫が凝らされている。「水曜どうでしょう」的でもあって、「水溜りボンド」は人間のキャラクターショーであり、そこで繰り広げられる関係のリアリティショーでもある。しかもアイデアがとどまるところを知らない。
それがもっとも顕著に現れるのは、互いに仕掛け合うドッキリ企画。他愛(たわい)もない企画が多いのだが、彼らは24時間、撮影されているかもしれないという覚悟で過ごしている。しかしだからといって気を付けすぎていると面白くない。あくまで自然体であることが大事だ。ここのさじ加減が絶妙だから、二人はトッププロなのだ。決して「有名な人だから面白い」にいかないのがすごい。
フレーズの切れるツッコミでSっ気もあり笑い声が楽しいトミーさんと、アイデアや編集の名手でありながら、理屈が先行してへなちょこな感じのカンタさん。この特集では、他のYouTuberによるコメントや、普段二人が動画では語らない作品やファンへの想(おも)いも綴(つづ)られていて、読み応えがある。「過激なお笑いじゃなくても、お笑いに対する姿勢が過激でさえあれば面白いと思う」(トミーさん)と言い切る。なにより二人の声がいい。二人の仲がいい。奇跡の出会いだ。
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太田出版・1080円=3刷6万5千部。19年2月刊行。特集はインタビュー、ベスト動画30本、田村淳との対談、袋とじ企画「相方へ捧ぐ」など。10~20代女性の反応が熱いという。=朝日新聞2019年4月13日掲載