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読書は自己実現達成への近道 髙松建設代表取締役社長 ・髙松孝年さんの本棚

読書は自分の世界を広げる扉 脇役も魅力的な隆慶一郎の時代小説

 学生時代は時代小説を読みあさり、中でも好きだったのが隆慶一郎の作品です。『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された『花の慶次』が面白く、原作『一夢庵風流記』(集英社文庫)にも興味を持ったのがきっかけでした。隆さんの作品は傑作ぞろいですが、とりわけ『吉原御免状』は出色だと思います。迫力の剣劇、艶やかな花魁文化、有名武将のたくらみなど、多彩な題材を絶妙にからめて描いていきます。主人公の松永誠一郎は宮本武蔵に育てられた剣豪で、自らに流れる血の宿命を受け入れて才能を開花させていきます。

 私自身は凡庸に育った人間ですが、血の宿命というものに共感するところがあり、若き日に読んだこともあって誠一郎の強さや優しさに憧れました。驚くような歴史解釈も本書の味わいで、なぜ吉原が誕生したのか、なぜ差別が生まれたのか、といった解釈に目を開かされました。続編の『かくれさと苦界行』(新潮文庫)や、本書の個性的な脇役が主役として登場する『柳生非情剣』(講談社文庫)、『影武者徳川家康』(新潮文庫)なども次々と読みました。どんな人間にも人生があり物語があると感じさせてくれるところも隆作品の魅力です。

 大学卒業後は住宅メーカーに入社し、28歳の時に髙松建設に転職しました。当時の社長は父でしたので、十字架の重みのようなものを感じつつ平社員からスタートしました。「創業家出身だからといって社長になれると思うな」と厳しく言われていましたが、責任ある仕事を任されるようになるにつれ、ビジネススタンスや将来のビジョンについて悩むようになりました。

 そんな時に役に立ったのが、『28歳・自己実現のヒント』です。自分の適性を見極め、いつまでにどのような方法で夢や願望を達成するのかを明確化する方法論が書かれています。自身の参考になっただけでなく、実践的な研修書として部下に勧めることもありました。約20年前の本なので、時事ネタなどはもはや古い印象がありますが、将来のビジョンから逆算してやるべきことを割り出していく思考法は今も参考にしています。

 『シャアに学ぶ〝逆境〟に克つ仕事術』は、「機動戦士ガンダム」の主要キャラクターであるシャアにスポットを当てたビジネス書です。シャアは敵軍の天才パイロットとして主役をしのぐ人気を博しました。しかし続編の「機動戦士Zガンダム」では以前のような輝きが見られず、ガンダム世代の私は、「シャアならもっとやれるはず」とイライラしたものです(笑)。本書はそのあたりを解説していて、多くの失敗から学んだシャアが、後進の指導やプレイングマネジャーとして手腕を発揮するようになったと分析します。中間管理職的なシャアの働きをビジネスシーンに置き換えているので、ガンダムファンは楽しく読めると思います。

歴代経営者の推薦本を自分なりに読み解く

 『嫌われる勇気』は、叔父で名誉会長の髙松孝之に勧められて読みました。アルフレッド・アドラーの心理学に精通する哲人に、青年が議論を投げかけるところから本書は始まります。「人は変われる。世界はシンプルである。誰もが幸福になれる」という哲人の言葉に納得できない青年は、何度も哲人のもとを訪ね、論破を試みます。青年の問いかけはいちいちもっともで、それゆえに哲人が彼に気づきを与え、導いていくプロセスが面白かったです。「人生のあり方を選ぶのは自分。自分を変えられるのは自分だけ。変わることを他者が強要しても意味がない」という考え方は、「すべての行動は自らの選択である」と説くアメリカの精神科医・ウィリアム・グラッサー博士の選択理論にも通じる気がします。とはいえ、自分がアドラーの哲学を消化しきれたとは思っておらず、目下続編の『幸せになる勇気』を読んでいるところです。

 『資本主義の終焉と歴史の危機』は、父から勧められた本です。地理的にも金融市場においてもフロンティアは失われつつあり、資本主義は限界にきていると、著者の水野和夫氏は指摘します。私はふだんから、飛躍的成長がなければ社会の繁栄はないのか、適性成長率とGDPとをリンクさせるべきなのか、適性分配とはなんぞや、といったことを考えることが多いので、本書の中でうなずく箇所が多くありました。ただ、それはあくまでも個人的な理解で、資本主義に基づいて経営を行っている以上、当然成長を考えていく必要があります。では、いったいどのような成長を目指すべきなのか。いろいろと考えさせられる内容でした。

 私にとって読書は、自分の世界を広げる扉。ジャンルにとらわれず、今後も多くの本に触れていきたいと思っています。

髙松孝年さんの経営論

 東京・名古屋・大阪、三大都市圏を中心に、マンション・オフィスビル・商業施設・工場・病院などの企画・設計・施工を行い、これまでに4,600棟を超える実績を持つ髙松建設。抱負などを伺いました。

検証と改善を徹底し新たなる100年へ

 髙松建設は、髙松コンストラクショングループの中核会社。創業以来黒字決算を維持し、無借金経営を継続している。集合住宅、オフィスビル、医療・福祉施設、店舗施設、宿泊施設などの建設事業を行い、これまでの実績は4600棟超。髙松孝年さんは6代目の社長で、孝年さんの父・孝育さんは3代目。創業家出身の社長就任は14年ぶりとなる。

 「昨年100周年を迎え、新たなる100年に向けた第一歩を踏み出すタイミングで社長という大役を任されました。私の役割は、社の実績を維持するのはむろんのこと、建築市場の好況を追い風に5代目前社長のもとで大きく伸びた業績と成長路線を引き継ぐこと。好況の背景には2020年東京オリンピック・パラリンピックがありますが、開催後の市場環境は不透明で、技術革新などのめまぐるしい変化も起こり得ます。好業績にあぐらをかかず、危機意識を持って経営にあたっていきます」

 掲げるキーワードは「C&Cカンパニー」。コンサルタント(Consultant)とコンストラクト(Construct)の略で、ソフトとハードの両面で強みを持つことを意味する。新たなる100年に向けては、「検証」「改善」「改革」というスリーステップを設けて取り組みを始めている。

 「当社は賃貸マンション事業の草分けですが、今では競合がひしめく市場に変わっており、時代に沿った提案ができているか、制度疲労はないかなどを改めて検証しています。検証して見えてきた課題は、これ以上は改善できないだろうという限界まで突き詰めていき、その上で改革の必要性があれば適宜対処していきたいと考えています」

首都圏のシェアが急伸中

 同社の建物は、阪神・淡路大震災でも倒壊・半壊を1棟も出さなかった強い耐震性を誇る。創業の地である大阪を中心に関西エリアでは高い知名度とシェアを有し、近年は首都圏でもシェアが伸長、関西と関東の売上高が逆転した。

 「賃貸事業が成立する駅から徒歩15分以内の物件を中心に扱い、駅から距離のある物件は、高齢者施設や物流倉庫など『駅近』の必然性がない物件に限っています。賃貸マンション市場は一時期、効率よく利益を得るために安普請のワンルームマンションが乱立しましたが、供給過剰による空室の増加、家賃の下落、近隣大学の移転といった理由から、マンション経営の行き詰まりや地域の空き家問題を引き起こしています。当社はこうした動きとは無縁。扱うのは、幅広い世帯にご利用いただける間取りを中心とする住宅や、住商複合型建築といった高寿命の物件です。また、土地の選定から現地調査、建物の設計・施工、アフターメンテナンスに至るまで、ワンストップで対応できる体制が整っており、これが大きな強みとなっています」

 歴史あるオーナー企業の経営を引き継いだ自らを「バトンランナー」と呼ぶ髙松社長。挑戦は始まったばかりだ。

 「私も副社長も40代。この世代の経営者は上場ゼネコンではめずらしい。保守的な業界体質にとらわれることなく柔軟に変化に対応し、次の100年の礎を築いていきたい」

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