7連敗の後に11連勝、人生にも野球にも特別な「花」が咲く。世阿弥も多分そう言ってた 中江有里

交流戦、苦悩の7連敗後、阪神タイガースは破竹の11連勝。強すぎて怖いです。
両リーグ最速の50勝到達。「凡事徹底」でどこまでもいってください!
ところで、最近の野球トピックの備忘録。
東京の仕事現場にて。帰り際、スタッフさんが「実は僕も(わたしも)阪神ファンです」
えー、阪神トークしたかったなぁ。阪神愛は人の距離を一気に縮める。
今秋公開予定の主演映画「道草キッチン」が、ベトナムのダナンアジア映画祭に招待された。思いがけず海外の映画祭に初参加!
会場で、アジア映画コンペティション部門に出品された「君の忘れ方」の作道雄監督から「関東の阪神ファンです」と挨拶された。阪神愛は海外でも熱い。
女優の長谷川真弓さんはソフトバンクホークスのファン。
最近仲良くなってから、しょっちゅうLINEで互いのチームの状況をやりとりしている。
阪神ファンだと知られるようになってよかったのは、他の球団のファンの方と野球について話せることだ。
試合結果に一喜一憂する毎日。好きなチームは違っても同じ気持ちを共有する仲間だ。
もっと他チームについて知りたい、と思ったが吉日。3試合同時視聴を始めた。
テレビで阪神戦、PCで別の試合(その1)、スマホで別の試合(その2)の3試合(基本、セリーグの試合です)。
阪神戦は、自分でも驚くほどに感情の波が激しくなる。
ヒットを打てば、テンションがあがる。エラーすると「何してんねん」と声に出る。
勝てば疲れは吹っ飛ぶけど、負けたら寝るまで気分はどんより。
敗因を自分なりに振り返り「明日は勝つ」と信じて横になる。
野球を観なければ、もっと静かな夜を過ごせるのだろう。
そうわかっていても観続ける人は、平穏な夜を過ごせない仲間です。
わたしの本棚に並ぶ世阿弥『風姿花伝』は付箋だらけ。
能を演じる人への実践論としてかなり具体的な内容があるが、芸術論として面白い。
『風姿花伝』の有名な言葉「秘すれば花」。
「つつましい美徳」「奥ゆかしい美しさ」を謳っているわけじゃない。
観客に「花の存在を気づかせてはならない」と言っているのだ。
たとえばミステリー小説を読む時、すぐにネタバレしては面白くない。
このネタが「花」だとしよう。
書き手は「花」を悟らせないように書き、読み手は「花」を推理しながら読み進める。
読書は「花」をめぐる書き手と読み手の攻防戦みたいなものだ。
野球の試合は毎試合まったく違う。一気に大量得点する時もあれば、0点のまま9回までいくこともある。最後の最後まで勝負の行方はわからない。
どんな試合にも思わぬところに「花」が咲く。だから観るのをやめられない。
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阪神戦は圧倒的に興奮する。平穏な夜はオフシーズンまでお預けだ。
ところで他チームの試合、二軍の試合には別の「花」がある。
各選手のプレイはもちろん、試合の流れや采配。客観的に試合と選手たちを観られる。
「いいピッチャーだな」「走塁がヤバい」「鬼肩だ」
どのチームの選手であっても、スーパープレイには拍手を送る。
セ界には想像もしなかった美しい「花」があちこちに咲いている(パリーグだって同じく)。
阪神の「花」は毎日たくさん咲いてほしい。
その花道を先までついていきます!