性別や働き方など「多様性」が叫ばれるが、理想と現実の落差は大きく、具体的にどうすればいいのかというと、難しい。
その点、コラムニストで作詞家のジェーン・スーの対談集『私がオバさんになったよ』では、参考になる言葉や考え方に出会った。漫画家・海野つなみとの対話では「他人に対する干渉を減らすことが多様性の第一歩」。文筆業の能町みね子とは、主夫と暮らす者同士で、女性が言いがちとされる言葉が実は「性別と全然関係してない」ことを確認する。こういう風になら考えられる、こんな言葉でなら話せる、と思う。
読み終えると、90年代のヒット曲をもじった書名が違った響きを持ってきた。私の固有性と、性別や年代といった属性、時間の経過、他者への呼びかけといった意味が、あのメロディーに乗ってあふれてくる。「本のタイトルは犬笛のようなもの」と著者は言う。「届いて欲しい人にしか聞こえない周波数のようなものがある」と。世代も境遇も違うけど、僕の耳にもそれは届いた。(滝沢文那)=朝日新聞2019年5月18日掲載
編集部一押し!
-
トピック 「翻訳は結婚に似ている」 伊丹十三賞の岸本佐知子さん 朝日新聞文化部
-
-
チケットの裏に 作家と巡るアートとカルチャー 小説、書き直し続ける 鈴木結生 鈴木結生
-
-
小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 太宰治賞・こがわゆうじろうさん ヤングケアラー、中卒、双極性障害。かわいそうな物語を拒否し、物語る側へ 清繭子
-
となりの乗客 六十二年後の読者 津村記久子 津村記久子
-
杉江松恋「日出る処のニューヒット」 「百年の時効」で3冠の伏尾美紀、新作「誰何」の技巧がたまらない(第42回) 杉江松恋
-
あなたに贈る本 俳優の石坂浩二さんが薦める3冊 若者たちへ いま手にとってみてほしい本 朝日新聞社
-
トピック 【PR 光文社・創英社・みすず書房・ミネルヴァ書房】プレゼント 朝日新聞1面広告の本、好書好日メルマガ読者計20名様に
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版