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「別冊月刊ビル 特薦いいビル 国立京都国際会館」 自然な光に包まれたビルたち

国立京都国際会館のメインロビー

 建築写真といえば、シャープでかっこいいカットが定番。でもこの本に載る西岡潔撮影の写真は、温かく自然な光に包まれたものばかり。ここに本書の持ち味が表れている。
 戦後建築の名作・国立京都国際会館(1966年)は、合掌造り風の台形と逆台形で構成した豪快な姿で知られるが、BMC(ビルマニアカフェ)なるグループが紹介すると、ぐっと人間的な顔つきに。例えば、会議前後に人々が集うロビー。巨大な吹き抜けに床の直線が幾層も重なり、どこか未来都市的だ。同時に剣持勇による家具が加わり、ざわめきが聞こえてきそうな柔らかな空間になっている。
 レストランや控室、椅子や手すりといった人と関わる存在も丹念に紹介。文章の方も、設計者の大谷幸夫や剣持に関わった人、維持管理に携わる人の話を大切にしている。
 写真や文章から推察すると、ビルマニアたちは「会議場、いや建築は、そこに集う人々がいてこそ」と考えているのだ。きっと。(大西若人・朝日新聞社編集委員)=朝日新聞2019年5月18日掲載