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25年の活動を振り返り、軽やかさに驚く「会田誠のスクラップブック」

会田誠さんは65年生まれの美術家。図版は本書の「MONUMENT FOR NOTHING~にほんのまつり」のページから

 会田誠早わかり。主にここ25年の活動を振り返る重厚な本だが、軽やかさに驚く。絵がある。字がある。立体がある。映像もあれば大人数のプロジェクトもある。政治・社会を忖度(そんたく)なくえぐりながら、ギャグ漫画の1コマのようでもある。1人の読者には受けとめきれないほどの世界が、大小様々な写真で記録してある。

 収録された何枚もの写真を見ていると、多彩な活動が実は一貫した態度に支えられていることがわかってくる。あの手この手で「日本」と向き合いながら、決して偉ぶらないことである。作品ごとの自己解説ではそんな「悪戦苦闘」のドラマを読むことができる。著者は優れた青春小説の書き手でもあって、日常ではかき消えてしまうような細かな機微を言語化するのが実に巧みだ。プラス、本書には膨大なツイート(ポスト)がそのまま貼り付けてある。図版右下の「人間(という生物種)のやったことで、【永遠の】モニュメントに値するものなど一つもない」(2020年7月25日)とか。過去のツイート群は、迫力を増して現在の読者の胸に突き刺さる。

 ツイートのアイコンも含め、本書には膨大な〈作家の顔〉が写り込んでいる。どれも笑ってない。喜劇王バスター・キートンをふと思い出すが、もし読者の顔を見ることができるなら、きっと様々な感情をおのおの浮かべているだろう。=朝日新聞2025年7月5日掲載