【芥川賞】今村夏子「むらさきのスカートの女」(小説トリッパー春号)
今村夏子さんは1980年、広島市生まれ、大阪市在住。2010年「あたらしい娘」(「こちらあみ子」に改題)で太宰治賞。11年、同作を収めた単行本「こちらあみ子」でデビューし、三島由紀夫賞を受賞した。16年「あひる」で河合隼雄物語賞、17年「星の子」で野間文芸新人賞。今回は3度目の芥川賞候補だった。
受賞作は、近所に暮らしている「むらさきのスカートの女」と友だちになりたいと願う「わたし」が主人公。ホテルの客室清掃の仕事をすることで様子が変化していく女と、それを陰から見守り続ける「わたし」の狂気をユーモアを交えて描いた。
【直木賞】大島真寿美「渦 妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 魂結(たまむす)び」(文芸春秋)
大島真寿美さんは1962年名古屋市生まれ、同市在住。92年「春の手品師」で文学界新人賞を受賞し、デビュー。2011年の「ピエタ」で本屋大賞3位。14年の「あなたの本当の人生は」で直木賞候補になった。
受賞作は、芝居小屋が立ち並ぶ江戸時代の大坂を舞台に、浄瑠璃作者・近松半二(1725~83)の生涯を描いた長編。人形浄瑠璃文楽の名作「妹背山婦女庭訓」を中心に、半二らが紡いだ数々の物語を重ね合わせながら、実が虚に、虚が実に裏返って渦を巻く創作の不思議を描く。
他の芥川賞候補作はこちら
・高山羽根子「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」(すばる5月号)
・古市憲寿「百の夜は跳ねて」(新潮6月号)
・古川真人「ラッコの家」(文学界1月号)
・李琴峰「五つ数えれば三日月が」(文学界6月号)
他の直木賞候補作はこちら
・朝倉かすみ「平場(ひらば)の月」(光文社)
>朝倉かすみさん「平場の月」 書評家・吉田伸子さんレビューはこちら
・窪美澄「トリニティ」(新潮社)
・澤田瞳子「落花」(中央公論新社)
・原田マハ「美しき愚かものたちのタブロー」(文芸春秋)
・柚木麻子「マジカルグランマ」(朝日新聞出版)