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選手同士の沖での駆け引きに注目して プロサーファー・松田詩野さん(後編)

文:谷口絵美 写真:斉藤順子

>松田さんが漫画「あたしンち」の魅力を語る前編はこちら

――松田選手は6歳のときに両親の影響でサーフィンを始めたそうですね。お住まいも海の近くということで、サーフィンは日常の一部になっている感じでしょうか。普段の生活を教えてください。

 毎日朝5時くらいに起きて、ネットで波情報をチェック。波がありそうだったらとりあえず自転車で海まで向かいます。自宅からは5分くらい。行ってみて波があったら、2時間くらい海に入ります。これを午前と午後の2回。家では主に腹筋のトレーニングをして、あとはジムでパーソナルトレーナーに指導してもらったりもしています。

 今は通信制の高校に通っているので、試合がなく地元にいて、波がない日に通学するようにしています。

――完全にサーフィン中心の生活ですね。友達と遊んだりする時間はありますか。

 波がないときは遊んだりもしますよ。ただ波予報も急に変わったりするので、前もっての約束ができなくて。当日になって、「今日、波がないから行けるよ!」みたいな感じです。

――14歳からプロとして活動し、国内外を転戦されていますが、一般的にはまだ何かをプロでやっていこうかどうか考える年齢ではないですよね。なぜ松田選手はプロになろうと決断できたのでしょうか。 また、それまでとサーフィンに向き合う気持ちに変化はありましたか。

 初めてサーフィンの大会に出たときに、すごくうれしいと思ったんですね。海外の試合にも出るようになって、勝つ楽しさも知って。最初から目標が世界の大会で勝つことだったので、私にとってプロに行くことは必然的なことでした。

 ただ、アマチュアのときは試合で競うのは同年代や少し上の人でしたが、プロになったら、試合の様子がライブ配信されたり、レベルが高い人とも一緒になったりします。そうした環境の変化の中で最初の1年はなかなか結果を出すのが難しくて、悩みました。でも、プロとしてやりたいと思ったのは自分なんだからと気持ちを奮い立たせて、乗り越えました。

 もともと負けず嫌いなので、勝てなかったときはものすごく悔しいんです。そういうときは勝ったときの気持ちを思い出して、「またこの感覚を味わいたい」と思って気持ちを立て直します。

5月7日に行われたジャパンオープンで優勝を決めた松田さん ©朝日新聞社

――「いいイメージを持つこと」を大切にしているということでしょうか。

 はい。試合の直前になったら、波に乗れている自分の姿を映像で思い浮かべます。自然が相手なので、毎回波が違うし、見ていて予想していたのと、実際に入ってみたのとでは違うこともあります。だからこそ練習が大事で。どんな波にも乗る練習をすることで、自分の中にいろんなパターンが蓄積されていきます。

 待っていた波が来て、その波でいいライディングができて、高得点をもらえたときがすごくいい状態ですね。

――競技者として、サーフィンの一番の魅力はどんなところにあると感じていますか。

 やっぱり、毎回違う波に乗れることが気持ちいいですね。一つとして同じ波がないから、同じ技をずっと練習することは無理だけど、自然を相手に毎回、自分のサーフィンができることがすごい魅力だなと思っています。体を大きく使ったライディングが私の強みです。

 試合会場に入ったら波の様子や潮の流れなどにずっと注意を払っているので、緊張した状態が続きます。だから、『あたしンち』のようなほのぼのマンガは、サーフィンのことを全く考えずにリラックスしたいときのお供にいいんですよね。

――サーフィンが東京オリンピックの正式種目になったときは、「私も出たい!」とすぐに思いましたか。

 正式種目に決まったときはまだ13歳か14歳くらいだったので、自分が出ることまではしっかりイメージできていなかったですね。単純に「オリンピックの種目になったんだ、すごいなあ」って思っただけで。でも実際にもうあと1年というところに来て、オリンピックに対する具体的なイメージも湧いてきたし、出たいという気持ちも明確になっています。

――今年の5月にはサーフィン日本一を決める「第1回ジャパンオープンオブサーフィン」で優勝しました。「初代女王」という称号はやはり特別なうれしさがありましたか。

 うれしかったというより、ここで優勝しないと、オリンピックの選考基準にもなっている9月の世界選手権に出られないので、すごく勝ちたいと思って挑んだ試合でした。勝ちたいという強い気持ちに加えて、楽しんでサーフィンすることも忘れずにできたので、それがよかったかなと思います。

――最後に、サーフィンをまだあまり見たことがない人に向けて、競技観戦を楽しむための注目ポイントをぜひ教えてください。

 勝負の行方は波次第なので、誰が勝つか予測できないところがサーフィンの面白さです。4人が同時に競技するので、いい波が来たなと思ったら、誰がそれに乗るかという「取り合い」みたいなこともあるんですよ。他の選手より先に行かなければいけないけれど、焦って飛び出しても駄目。潮の満ち引きでも波の大きさは変わるので、潮の流れを見ながら波がどんな大きさになるかを読み、よく選ぶことが大事なんです。ライディングの前の、そうした沖での駆け引きにもぜひ注目してください。