空港の手荷物検査場や公園など、現代の風景に、2億年前の古生物がリアルなサイズ感で合成されている。古生物のサイズを、理屈ではなく感覚として伝えるための一冊だ。ただ一方で、古生物を合成するシーン選びがどう考えてもやりすぎで、リアリティより正直、私はその「変さ」が気になっている。
冷静に考えてくれ、手荷物検査場のトレイに生き物を置く人がいるのか?首長竜を背負って走るバスがあるのだろうか? もしかして古生物のことが好きで好きでしかたがない人には、本当にこういう風に世界が見えていたりするんじゃないか?ふと、そんなことを思う。手荷物検査のトレイを見て「ここにならゲロットラクスがピッタリ入るなあ」なんて、その人は考えてしまうのかもしれない。
サイズがわかるだけじゃない。古生物への好奇心を、憑依(ひょうい)させてくれるようなそんな本だ。物凄(ものすご)く好きなものがある人を見ると、毎日楽しそうだなあと思う。そしてこの本を見て、なんだ、やっぱり楽しいんじゃん!そう思えた。奇妙な爽やかさのある一冊です。=朝日新聞2019年8月17日掲載
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