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「日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義」 経営者の「言い訳」問いただす

 ちょっと大げさな題名。加えて帯には「在日30年、日本を愛する伝説のアナリスト」との著者紹介がある。眉につばをつけたくなる人もいるだろう。

 だが、確かに著者には先を見通した実績がある。90年代初め、旧大蔵省などがバブル崩壊の傷を軽視していたころ、不良債権が巨額にのぼることを警告した。銀行の貸し出しの伸び率からはじき出した数字だった。

 データから、どんな未来が見通せるのか。本書が取り上げるのは、人口減少と高齢化の下で経済成長を保つ方策だ。類書は山ほどありそうだが、「明快な語り口」「意外性」「痛快さ」の3点が本書の特徴と思える。

 まず「明快な語り口」。本書の基本的な筋立てはこうだ。

 (1)人口減少の本格化でデフレ圧力が強まる。(2)GDPと社会保障を維持するには大幅な生産性向上が不可欠だ。(3)そのためには輸出の増加、企業規模の拡大、最低賃金の引き上げ、そして人材育成が必要だ――。

 (1)と(2)のつながりは若干腑(ふ)に落ちないが、海外の研究論文を引用しつつ、やや不安になるぐらいズバズバ言い切っていく。

 「意外性」。ビジネス・経済系の論者が「生産性の向上」というと、働き手からすると、給料を欲しければ成果を出せと言われる響きがある。だが本書は違う。まず最低賃金引き上げが必要で、それが経営側に生産性向上を強いるという。英国などの例を引き、適度な引き上げなら雇用は減らず、経営者は生産性を高めることで人件費の増加を吸収しようとすると論じる。

 さらに「労働者搾取資本主義」を終わらせ、「日本の優秀な人材を適切に使って、適切な給料を払うという極々まっとうな経済構造に変える」とまで説いてもらえれば、働く側としては痛快だ。経済界がしきりに望む「解雇規制の緩和」についても、海外のデータと比較しつつ、生産性を上げられなかった「経営者の言い訳」と断じている。

 願わくは、当の経営者層にこそ一読してほしいのだが。

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 東洋経済新報社・1620円=6刷8万部。1月刊行。30~40代によく読まれている。「政策提言の本ですが、自分の仕事に対して“気付き”が得られる、という感想も多い」と担当者。=朝日新聞2019年8月17日掲載

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