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学校で習う日本史とはひと味もふた味も違う「戦国の教科書」 旬の作家6人が書き下ろし

 学校で習う日本史とはひと味もふた味も違う「教科書」。それが、木下昌輝さん、澤田瞳子さんら旬の歴史・時代小説作家6人が書き下ろした『戦国の教科書』(講談社)だ。

 「下剋上(げこくじょう)・軍師」「宗教・文化」「武将の死に様」とテーマに応じて書かれた短編を通じて、戦国の世を読み解く。作品ごとに文芸評論家の末國善己さんによる解説とブックガイドがつく。

 矢野隆さんが描く黒田官兵衛は、仕える先は「一時(いっとき)の主(あるじ)」という発想が身に染みつき、天下を自ら手中に収めるという野心に身を焦がす老人だ。身分秩序をひっくり返すイメージが強い下克上だが、近年の研究は、「政権を簒奪(さんだつ)するのではなく、ソフトランディングで移譲」させていたことを示唆するという。官兵衛の祖父が仕えた主君の姓が父の代に与えられたという作中の設定を、末國さんは「様々な価値観がゆらぐ乱世だったとはいえ、身分秩序が根強く残っていた戦国の実態を、的確に捉えていた」と解説する。

 主君毒殺、東大寺放火などの悪行には加担していなかったとする、新しい松永久秀像とその死に様を描いた今村翔吾さん。戦国武将の死という題材に関連して、末國さんが紹介する数多くの文献と小説は、本能寺の変をめぐる多彩な解釈をはじめ、歴史的事象のとらえ方が変わり続けていることを教えてくれる。

 末國さんは「歴史好きも、歴史小説好きも楽しめる。どの短編も力作なので、アンソロジーとして読んでも面白い」と話す。

 23日には大垣書店京都ヨドバシ店で、執筆陣5人が登壇するトークショーがある。問い合わせは同店(075・371・1700)。=朝日新聞2019年9月11日掲載