
明治の文豪・夏目漱石(1867~1916)の代表作で、行方がわからなくなっていた「坊っちゃん」「吾輩は猫である」の自筆原稿を、天理大学付属天理図書館が入手した。漱石の創作の過程を知ることができる貴重な資料で、5~6月に東京、10~11月に奈良県天理市で公開される。
原稿は「坊っちゃん」全編の150枚と、「吾輩は猫である」第10章の62枚。以前は個人コレクターが所蔵し、「坊っちゃん」の原稿は写真複製本が刊行されたこともある。
どちらも1995年の博物館展示図録で紹介されたのを最後に所在不明になっていたが、2019年3月に天理図書館が古書店から購入。筆跡などから、漱石自筆の原稿と確認された。
両作とも、漱石の親友だった俳人の正岡子規らが創刊した明治時代の文芸誌「ホトトギス」に連載された。原稿には赤インクによる推敲(すいこう)や修正の跡があり、漱石の創作過程を追うことができる。
原稿は天理大学の創立100周年記念展として、漱石と同時代を生きた子規、作家の森鷗外の自筆資料と共に公開される。
同館の西口尚子司書は「漱石と子規は学生時代からの親友。鷗外は俳句を通して子規と親交があり、作家になる前の漱石とも子規の紹介で会った。そうした3人の人生に、自筆資料を通して触れてもらえれば」と話す。
「漱石・子規・鷗外―文豪たちの自筆展―」は、5月18日~6月15日に東京都千代田区の天理ギャラリー、10月15日~11月17日に天理市の天理大学付属天理参考館で開かれる。(今井邦彦)=朝日新聞2025年5月7日掲載
