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雑誌「月刊生徒指導」 生徒ひとりひとりに寄り添うには、どうするの?

「月刊生徒指導」10月号

 こんな雑誌があるのかとちょっとおどろいた。「月刊生徒指導」。

 うん、たしかにそこに課題があれば雑誌があってもおかしくない。昭和46年認可とあるから、職員室には昔から普通に置いてあるのだろうか。

 学校をめぐる問題は昨今ずいぶん深刻化しているように思える。いじめ、不登校、理不尽な校則に部活のパワハラ、教職員のブラックな仕事環境などなど、当事者でなくてもいろいろな話題が耳に入ってくる。あまりの課題の山積みっぷりに、根本から変わらなければにっちもさっちもいかないんじゃないかと思ってしまうが、現場はそんな悠長なことは言っていられない。

 紙面には、インタビュー、論文、連載とほとんど文字ばかりの記事が並ぶ。一記事が短く、テーマも近接しているのでメリハリをつけて読むのが難しかったが、5月号の「不登校」特集が興味深かった。スマホ登場以降の不登校がこれまでとは違ってきたという考察や、校則の徹底では荒れた学校は立て直せない話など、なるほどと腑(ふ)に落ちる。

 最新の10月号は「いじめ」特集。「生徒指導」でも過去に何度も取り上げてきたテーマである。

 きれいごとでは解決できないとばかりに「有形力の行使」も辞さないという論文が載っていて驚いた。「危険すぎて絶対に一般化できることではないし、しないにこしたことはない」と断りながらも、このような論文が載るところに、問題の複雑さが窺(うかが)える。

 私には、自己認識を高める授業による成功事例の記事が参考になるように思えたが、あくまで当事者でない人間の感想だから、現場の先生たちがどう感じるかはわからない。

 何にしても、読んでみて突きつけられるのは、正解を知る人はいないという当たり前の現実である。特集に応じて、大学教授や専門家や現場の教諭がいろんな角度から持論を述べているものの、こうすればすべて解決という簡単な答えはない。むしろ多くの識者が、あくまで生徒ひとりひとりに個別に寄り添うことの重要性を繰り返し強調している。まあ、それはもっともなんだけれど、問題は、で、どうするのか、ということだ。

 月刊誌にそこまで期待するのは酷かもしれないが、正直もっと具体的な事例研究をたくさん読みたいと思った。重要な分野だけにがんばってほしい。

 ところで、この雑誌、果たして現場でどのぐらい読まれているのだろう。忙しい先生たちがこれをじっくり読む時間はあるのだろうか。=朝日新聞2019年10月2日掲載