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「教養としてのヤクザ」など、今週注目の新書5選(朝日新聞2019年11月2日掲載)

『ソーシャルワーカー』

 高齢化社会の現代、人々の困りごとは多様化。ソーシャルワーカーの役割や責任を考え、「人間を雑にあつかう」ことに慣れた社会に警鐘を鳴らす。資格が分断されていることや地域の問題など、経済学者とソーシャルワークの第一人者たちが展望。
★井手英策・柏木一惠・加藤忠相・中島康晴著 ちくま新書・902円

『読書会入門』

 著者は、日本最大規模の読書会コミュニティ「猫町倶楽部」の主宰者。名古屋や東京など、全国5都市で年間約200回の読書会を開催、延べ9千人が参加する。この読書会は課題本を読了してから参加し、他人の意見を否定しないことがルールだ。本を介した居場所作りのあり方を伝授する。
★山本多津也著 幻冬舎新書・858円

『キリスト教と死』

 幽霊は、死者の魂の再来か、それとも悪魔か天使か? その解釈ひとつにも、キリスト教の死生観が大きく関わっている。絵画や文学、さらに墓、モニュメントなどを通してカトリックとプロテスタントを対照させながら、天国と地獄や「最後の審判」などに表現された来世観を探る。
★指昭博著 中公新書・946円

『ヴァルター・ベンヤミン』

 ベルリンの富裕層に生まれたが、過酷な人生を歩み、ファシズムの嵐の中で自死を遂げたユダヤ人思想家ベンヤミン(1892~1940)。幼年時代から最期までの伝記的な紹介と共に、言語、芸術、歴史の本質へと問いかける批評の思考の足跡をたどり、読者をその著作へと導く。
★柿木伸之著 岩波新書・946円

『教養としてのヤクザ』

 暴力団取材をしてきたノンフィクション作家の溝口氏とフリーライターの鈴木氏の対談。ヤクザの実像を、タピオカ、東京五輪、選挙、憲法、芸能人など、様々な接点から論じる。今のヤクザはセミナー好きなどの一面も。取り締まりの強化で衰退しつつある姿を浮き彫りにする。
★溝口敦・鈴木智彦著 小学館新書・880円=朝日新聞2019年11月2日掲載