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田中慎弥さん「ひよこ太陽」で泉鏡花賞 「空っぽな状態で書く方が言葉に対して謙虚になれる」

泉鏡花文学賞の授賞式の前、記者会見で話す田中慎弥さん=岡純太郎撮影

 第47回泉鏡花文学賞の授賞式が9日、金沢市内であり、「ひよこ太陽」(新潮社)の田中慎弥さんに正賞の八稜鏡(はちりょうきょう)と副賞100万円が贈られた。

 本人を思わせる主人公の日常をフィクションを交えて描いた作品。生活に苦労する作家の純粋で切実な告白が読者の心をとらえる。

 2012年に「共喰い」で芥川賞を受賞した際の「もらっといてやる」発言で注目を集めた田中さん。選考委員の山田詠美さんは「田中君、もらっといてくれてありがとう」と切り出し、会場をわかせた。そのうえで「筆記用具が紙を滑る音が聞こえてくるような、心象風景を思い起こさせる作品」と評した。

 田中さんは「戦争体験や宗教的背景のような抜き差しならない何かを私は持ってない。空っぽな状態で書いている。その方が言葉に対して謙虚になれる。自分というものを出さずにどれだけ自分の小説を書けるか。これからも考える暇があったら書いていきたい」とあいさつした。(岡純太郎)=朝日新聞2019年11月20日掲載