宇宙や地球の成り立ちから人類の歴史まで約138億年の出来事を扱う「ビッグヒストリー」を唱える歴史家、デイヴィッド・クリスチャンさん(73)が来日した。高校で特別授業を開き、地球温暖化の危機が何をもたらし、どう行動すべきか、次世代を担う若者たちに熱く語りかけた。
クリスチャンさんは米国生まれ。現在は豪マッコーリー大卓越教授。宇宙創成や生命誕生から現代文明のゆくえまで、自然科学と人文科学の様々な研究手法を用いて総合的に解明する「ビッグヒストリー」を提唱。日本語版『オリジン・ストーリー』(筑摩書房)が刊行された。
特別授業は、神奈川県のアレセイア湘南高校で1年生の生徒約30人に行った。宇宙が生まれ、太陽系に生命が誕生する過程をたどり、地球上が「なぜ生命にとってちょうどいい温度になったか」について語りかけた。
さらに、人類が地球全体に大きな影響を与える新たな地質年代である「人新世」に入ったと説いた。「今や人類は二酸化炭素を地球や生物が吸収する何十倍ものペースで排出している。私たちの行動が地球の未来を形づくるまでになった。とても危険なことだ」
授業を終え、松島蓮さん(16)は「もともと歴史が好きだが、なぜこうなったのかを知るために科学を学ぶ必要があると思った」と話した。
クリスチャンさんは朝日新聞の取材に、「今まさに歴史の転換点を生きている現代の私たちには(他の種も含めた生物圏を守っていく)責任がある」と強調。「若い世代が未来について考えて行動する手助けになれば」と話した。(大内悟史)=朝日新聞2019年12月25日掲載