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「オリジン・ストーリー」書評 宇宙史の中で人間の存在考える

評者: 長谷川眞理子 / 朝⽇新聞掲載:2020年01月25日
オリジン・ストーリー 138億年全史 著者:デイヴィッド・クリスチャン 出版社:筑摩書房 ジャンル:歴史・地理・民俗

ISBN: 9784480858184
発売⽇: 2019/11/14
サイズ: 19cm/385,27p

われわれはどこから来たのか−。宇宙創成から生命の誕生、現代文明までの138億年を一つの物語として描き出す。天文学、物理学、生物学、考古学、経済学など、様々な学問分野の最先…

オリジン・ストーリー 138億年全史 [著]デイヴィッド・クリスチャン

 どの文化にも宗教にも、世界はどのようにして始まり、自分たちはどうしてここにいるのかを示す言い伝えがある。それがオリジン・ストーリーだ。たいていは、神話という形をとり、世界を作ったのは神様だ。そしてその中で、道徳的教訓も示される。
 さて、自然科学は、ビッグバンによる宇宙の始まりから今日までの宇宙史を明らかにしてきたし、地球という惑星上の生物の進化についても明らかにしてきた。そして、私たちヒトという生物の進化や、ヒトがどんな暮らしをし、どんな社会を築き、その活動が地球生態系に対してどのような影響を及ぼしているかについても、明らかにしてきた。
 それでは、これらの自然科学の成果をもとに、私たちのオリジン・ストーリーが描けないものか? そこには全知全能の神様は出てこない。文化によって異なることもない、普遍的なストーリーだ。ただし、科学の進歩によってつねに改訂される余地がある。
 自然科学はいくつもの分野に分かれ、研究が無数に行われている。しかし、諸科学の成果を結びつけて、私たちのオリジン・ストーリーを語ろうとしたら、研究の大部分は切り捨て、本当に大事なことだけをつなぎあわさねばならない。それは、地球儀を作ろうとしたなら、大陸の配置と地形と国境の輪郭だけを明らかにし、地域の細かな内容については捨てねばならないのと同じことだ。
 本書で問題とする宇宙史の大事な転換点は、宇宙の始まり、恒星と銀河の誕生、分子と衛星の出現、生命の誕生、多細胞生物の誕生などだ。そして、ヒトという種が現れ、農耕が始まり、現代のような世界が生じて、人新世と呼ばれるようになる。しかし、エントロピーの法則により、やがてすべてはまた混沌の中に消えてゆく運命なのだ。
 本書は、138億年の宇宙史の中で人間の存在を考える、現代の知性のエッセンスである。
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David Christian 1946年生まれ。歴史学者。オーストラリアのマッコーリー大教授。『ビッグヒストリー入門』など。