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「小説現代」読み切り長編を軸に復刊 連載主体から路線変更

 約1年半にわたって休刊していた講談社の小説誌「小説現代」が、2月22日発売の3月号からリニューアル復刊した。連載が主体という従来の小説誌のスタイルを捨て、読み切り長編の一挙掲載を軸に据える。

 同誌は1963年創刊。最盛期は40万部を超えた。当代きっての流行作家が名を連ね、発表の舞台もほとんど小説誌しか考えられなかった時代があった。

 それが休刊前の部数は約1万部にまで減った。「本当の小説好きじゃないと、単行本も買わなくなった。いわんや小説誌は」と塩見篤史編集長。ではなぜ、小説誌を発行してきたのか。「単行本を出すために原稿を集めるための『集稿雑誌』。読者はほとんど見ず、作家の顔しか見ていなかったところがあった」と明かす。

 路線変更の試金石となったのは、真藤順丈さんの『宝島』だ。直木賞を昨年受賞、22万部のヒットとなった。同作は、2018年6月号にまず読み切りの形で掲載した。雑誌全体の3分の2を占めた。「雑誌の売り上げは少し下がったが、話題作りには成功し、直木賞にもつながった」と振り返る。

 リニューアル第1号には、ひき逃げの加害者を描く薬丸岳さんの長編「告解」を一挙に掲載。単行本化を予定している。ほぼ同じ内容が雑誌で読めてしまうことについては、「単行本が出る前からプロモーションになる。雑誌を起点に本を売る流れをつくりたい」と言う。そのためには原稿にこだわる、と塩見さん。「作家の名前や実績でなくて、あくまでその作品で勝負する」(興野優平)=朝日新聞2020年3月4日掲載