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レジ袋有料化、子どもにこそ知ってほしい環境問題 絵本「プラスチックモンスターをやっつけよう」高田秀重さんインタビュー

文:坂田未希子 写真:家老芳美

プラスチック全体を見直そう

――これまでにも、プラスチック問題を取り上げた本は多くありますが、特にどんなところに重点を置いてつくったのですか?

 今までいろんな本を書いたり、監修してきたりしましたが、「ポイ捨てはやめましょう」「ゴミはきっちり分別しましょう」「ゴミを燃やすのはよくない」など、表面的なところで終わってしまうものが多かったので、プラスチック問題の鍵になる部分を正面から取り上げるなら、ぜひ協力したいと監修を引き受けました。

――その「鍵」とは?

 プラスチックには、加工しやすくするためや品質を保つために、いろいろな添加剤が使われていますが、その中には人間や生物に有害なものもあります。本書ではその問題についてフォーカスしています。

――それはそんなに重要なことなのですか?

 プラスチック製品は安くて手軽で加工しやすく、便利なものなので身近にあふれていますが、有害なものもたくさんあります。例えば、ポリ塩化ビニールは子供のおもちゃに使ってはいけないと決まっています。口に入れたりすることで、生殖器の発育に影響があるからです。ところが、おもちゃ以外でも、子どもたちが使うものに多く使われているんです。

 ポリ塩化ビニールは加工するため、たくさんの添加剤を使用しています。それがゴミとなって海に流れ出し、ボロボロに劣化してマイクロプラスチックとなって魚が食べてしまう。その魚を子どもが食べてしまうかもしれない。

 子どもが使う、使わないに関わらず、プラスチック全体をもう一度見直していかなければいけない、それが本書のテーマです。

大人にも読んでほしい

――プラスチックを「モンスター」のキャラクターになぞらえるなど、子どもでもわかりやすい言葉やイラストでまとめていますが、かなり難しい内容を伝えていますね

 もちろん、大人にも読んでもらいたいですね。プラスチックがモンスターであり、なおかつ「やっつけよう!」と書いているので、異論を唱える人もいるかもしれません。そのようなときには、我々のような専門家がちゃんとサポートして、きちんと答えられるような内容にしたいと監修に取り組みました。

――遠く離れた海の汚染のことは、どうしても日本の子どもたちにとって身近な問題と感じにくいかもしれません。どのような工夫をしましたか?

 海外では子どもたちがプラスチック問題に早くから取り組んでいますが、日本ではまだまだ知られていないことがたくさんあります。家にあるプラスチックごみを数えたり、プラスチックを買わないようにするポイントなど、子どもがすぐに取り組めることを紹介することで、身近な問題として感じてもらうよう工夫しました。

 大人はどうしても、安いからとプラスチックを買ってしまうところがあります。これからは体にいいか、自然にいいか、そういうところをよく考えて選んでもらいたい。「お金と自分たちの地球、健康とどっちが大事なんだ」ということを、子どもたちが大人に対して問いかけてくれるようになるといいなと思います。家族や学校、地域で「プラスチックは使わない方がいいんだよ」と話すことで、世の中全体が変わっていってほしい。

――プラスチックをゴミとして「燃やす」のではなく、プラスチックそのものを「減らす」ことを訴えています

 SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)にも関わる問題です。2015年に国連のサミットで採択された、2030年までのSDGs の13番に「気候変動に具体的な対策を」とありますが、石油から造ったプラスチックを燃やすと温暖化が進むので、環境によくありません。また、石油自体も持続可能な資源ではないので、資源の持続的な利用に値しません。

 石油由来のプラスチック自体が地球に合わない存在になってきている。そういう観点からも、燃やせばいいというものではなく、減らすことが大切です。

「自然の輪の中に入る楽しさ」

――プラスチック製品は身のまわりにあふれています。具体的には、どのようなことを心がけていけばいいのでしょうか?

 レジ袋をやめて布袋にしたり、木のおもちゃを使ったりするなど、身の回りにあるプラスチック製品を天然由来のものに置き換えれば、ごみになってもまた循環させることができます。形を変えて自分の元へ戻ってくるという「循環の思想」を子どもたちに伝えたいと思います。

――そのために最後のメッセージで、「自然の輪の中に入る楽しさ」という言葉を使っているのですね

 そうですね。石油から作ったプラスチックを使い続けている限り、自然の輪の中に入れない。自然素材のものを使えば、自分も輪の中に入れる。プラスチックフリーの行動をすることで、「自分も自然の一員なんだ」という感覚が生まれてくるといいなと思います。

 プラスチック製品はカラフルできれいだったり、手軽に買えるというところで選んでしまうことがありますが、実は危険なものもあったり、最終的には自然に還らないものなので、なるべく使わない、減らしていくことがいいんだと気づいてほしいんです。

――レジ袋の有料化が進んでいますが、プラスチックごみの削減に期待できますか?

 レジ袋はプラスチックごみの全体の中では量も少ないですし、生産量の中でも1〜2%ぐらいなので、それを減らしても全体の量が減るものではありません。でも、プラスチックごみの問題を考える時に、ひとつの象徴的な存在なので、なぜレジ袋を減らすのか、みなさんが考えてくれるきっかけになればいいと思います。そこから他のものに波及していく効果は大きいのではないかと期待しています。