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子どもとの対話のきっかけに! おにぎりのルーツから世界のつながりについて問いなおす絵本

文:日下淳子、写真:松嶋愛

ものごとの原点に興味があった

――「お米はどこからきたの?」「塩はどうやってできるの?」そんな素朴な疑問を楽しく解決してくれる絵本『おにぎりはどこからきた?』(東急エージェンシー)。大人と子どもが一緒に、ものごとの始まりやつながりについて考えるきっかけになればと、マルチクリエイターの小沼敏郎さんが手掛けたはじめての絵本だ。主人公の兄妹が、おにぎりの妖精と一緒に生産地や流通の様子を見に行くという物語である。

 絵本を作ろうと思ったきっかけは、子どもが生まれたことですね。娘が3、4歳になって会話が成り立つようになったとき、何を話題にしたらいいのか迷うことがありました。でもそういうとき、ぼく自身に興味があった、ものごとの原点とか、その奥にある物語の話をしたら、娘がけっこう興味を持ってくれたんです。あ、子どもって話せば伝わるんだなって。

 ただ、ぼくはバリバリのビジネスの世界にいるので、つい論理的に話したくなってしまいます。でも、子どもってもっと空想の世界にいて、楽しいことにしか興味がないんですよね。子どもの好奇心を止めないように背中を押してあげながら、現実の世の中がいろんなこととつながってるんだということを伝えられたらと思って、この絵本を作りました。

――おにぎりはどこからきた? という疑問に対して、この絵本は、まず田んぼの稲刈りからトラックで運ばれてくるまでのお米の流れを絵で表している。詳しい説明文はないが、「この機械はなに?」「このトラックはどこに行くの?」と子どもが興味を持ったところに、大人が応えていくような対話を絵本で生み出していきたいという小沼さん。話のきっかけとなるように詳しい解説はウェブサイト で見られるようにした。

 テーマをおにぎりにしたのは、お米、海苔、塩、鮭といった混合物からできているのがおもしろいと思ったからです。塩はヒマラヤの山からきているし、海苔は海からくる。それが直接来るわけでなく、工場や入札という過程を通って運ばれてくる。おにぎりという身近なものを作るために、いろんな人や外国までが関わっているとは、子どもにはなかなか想像できないですよね。絵本を通して、世界って自分に関係しているんだなと、思った以上に子どもは感じてくれています。

 この絵本を見ながら「パパは、このようにトラックで色々なものを運ぶ仕事をしているんだよ」と話してくれた方もいたようです。このように子どもがお父さんの仕事に興味を持ってくれたりしたら嬉しいですね。おいしいおにぎりを食べたくても、材料を届けてくれる人がいなかったら、ぼくたちは食べられない。仕事のひとつひとつが全部つながっている。そういうふうに、世界がつながっていることを意識するとっかかりになればと思っています。

 とはいえ、子どもに対して、この本を端から端まで真面目に読んでほしいとは思っていません。勉強をさせたいのではなく、好奇心が動くきっかけになってほしい。だから楽しく、ゆっくり、ときに脱線しながら読んでほしいです。本の最初に、兄妹が変身するシーンがあるんですけど、変身したわりにかっこよくないとか、すぐに冒険に出かけないで、「ちょっとパパとママの許可取ります」と寄り道したりしているんですよ。こういうところに、子どもはどんどんつっこんできます。物語と全然関係ないところに注目していれば、それも拾いながら、対話してくれればいい。物語を飛び出しても、楽しさや疑問を共有していくことが、一番大切なことだと思っています。

自分の言葉で子どもに話して、手柄にして

――『おにぎりはどこからきた?』は、大人と子どもが一緒に読む「Where X from?」(Xはどこからきた?)シリーズの第1弾。「〇〇はどこからきたの?」という子どもの問いに、大人の言葉で応えていくツールとして使ってほしいと小沼さんは言う。それは、大人自身が世界を振り返ることにもつながる。

 読者対象は、子どもとか大人といった線引きをしていません。一番嬉しいのは、大人がこっそり買って読んで、それを話題として自分の言葉で子どもと話してもらえることですね。「パパはこんなこと知ってるんだよ」っていう、手柄にしてほしいです。

 これからも続編を出していきたいと思っていて、 “どこからきた”シリーズにしようかなと話しています。チョコレートとか、スマートフォンなどをテーマにしてもおもしろいですよね。カカオのストーリーなども興味深いですし、好奇心の導入としていろんなことを伝えていけたらと思っています。

>『おにぎりはどこからきた?』読み聞かせのヒントはこちら