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「進化する里山資本主義」 地域の「よそ者」が魅力を見つける

 木くずの廃材をもとにバイオマス発電を行ったり、古くから地域で育てられてきた多品種の柑橘(かんきつ)類を個性あるジャムにして販売したりする――地域にある資源を活用して、新たな付加価値を生み出し、地域で経済をまわす流れをつくる取り組みを藻谷氏らが「里山資本主義」として提唱してから7年、これに続く動きが全国に広がってきた。

 岩手県で少量販売によって漆の需要を開拓したり、岡山県で村の木材を使って上質な建物や家具を作ったりするなど、本書に紹介された起業家たちの熱意には胸が躍る。

 農村部に限らず、都会の中の未活用資源を里山に見立てることもできる。工場閉鎖で空洞化が起こりかけていた大阪の加賀屋地域で、工場跡地の広い空間をアーティストに開放して新たな文化を生んだ事例も紹介されている。

 本書によれば地域の魅力はときに、「よそ者」によって再発見されるのだという。都心に通勤するビジネスパーソンは、これまで家には寝に帰るばかりで地域にとって「よそ者」だったかもしれない。だが、長距離移動の自粛や在宅勤務が求められる今、改めて地域を見渡せば、新たな地域の魅力、ビジネスのチャンスが見つかるかもしれない。=朝日新聞2020年6月6日掲載