日本人ほどランキング好きな国民はないそうだ。ランキングには一定の指標があり、自分の頭で判断しなくてすむからだと著者は言う。みんながいいと思うものには安心感があるが、他者が決めた評価にとらわれると、自分には何かが足りないと感じて焦りや不安が生まれ、幸福度も下がる。自分の軸を持ち、自分の意思で決断することは、幸せに生きる第一歩なのだ。
著者は英オックスフォード大学で学び、国連職員としてニューヨークや南スーダンや東ティモールで人材育成などを行ってきた。当初、能力も努力も足りない気がして苦しむが、求められているのは「知識だけではなく、その人自身の体験や考え」だと気づき、ありのままの自分に目を向けるようになっていく。
本書では、他人や世間に流されず思考するヒントが綴(つづ)られる。印象的なのは南スーダンでの経験とコロナ自粛の日々を重ねたエピソードだ。
「危機の時にこそ、その人の強みや本質」「本当に表現したいことが現れる」。一見小さいことに見えても小さいことは役に立つ。「小さいことに励まされる人がたくさんいるということを忘れないで」。迷いながら生きる人の背中を、力強く押してくれる。=朝日新聞2020年6月20日掲載