「ぼくたちの緑の星」
もしも、教室で手をあげて質問することが禁止されたり、絵を描くことや歌をうたうことができなくなったりしたら、どうしますか。また、町や学校から図書館がなくなったらどうなると思いますか。この物語はもしかしたらそんなことが本当に起こるかもしれないと思わせる少し怖いSF小説です。
主人公の少年は、そのような不自由な世界で父と2人で暮らしています。名前も失いかけ、友だちとも仲よくできないままです。なぜならそこは、大人も子どもも一つの大きな「ゼンタイ・モクヒョウ」に向かって「ジュウゾク」させられている社会だから。そんな中で生きていくために大切なことは何か、また何ができるのかを考えさせられドキッとします。(小手鞠るい作、片山若子絵、童心社、税抜き1300円、小学5年生から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】
「りすとかえるとかぜのうた」
旅したことのないりすが、新しい舟を手に入れた。同じく旅をしたことがないかえると一緒に出かけようと誘いに行くのだが、かえるはりすに気づかず、いつの間にかりすも舟の上で眠ってしまうのだった。
遠くに出かけても日常の中にいても、気のあう友と語らい過ごせる幸せが、生活様式が大きく変わった今余計に心にしみる。
しっとりとした空気をまとった色彩の中、風が気持ちよく通り抜けていくよう。ぽつぽつと声に出すと、昔から知っている音楽が流れているみたい。目にも耳にも心地のいい絵本。(うえだまこと作、BL出版、税抜き1600円、3~5歳から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】
「クラクフのりゅう」
ポーランドの古都クラクフのお城にまつわる昔話。地下の洞穴にすむ巨大な竜は、羊の群れを襲っては、丸のみにしてしまう。おびえる人々のために王女自ら「竜を退治したものは、王女と結婚できる」というおふれを王様に提案するが、どんな屈強な男たちも竜の恐ろしさに逃げ出す始末。靴職人の少年ドゥラテフカが知恵を絞り、竜退治に挑む。のびやかな筆。ダイナミックな場面展開。王女と結婚後も、退治した竜の皮を使って城中の人に靴を作ってあげる結末に、にっこり。(アンヴィル奈宝子文・絵、偕成社、税抜き1300円、4歳から)【絵本評論家・作家 広松由希子さん】=朝日新聞2020年6月27日掲載