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「冬にやってきた春と夏と秋」ほか子どもにおススメの8冊 やさしさ、じんわり、冬

 空気が乾燥しがちな冬、心はどうぞ乾きませんように。4人の選者がこの季節におすすめの本を紹介します。(☆=新刊、★=既刊、価格は税込み)

☆「冬にやってきた春と夏と秋」(徳間書店)

 冬の王さまは誕生日に子どもの頃から長いこと会っていなかった春の女王、夏の王、秋の女王のきょうだいを招待することにしました。太陽や風、木や草は、そんなことをしてはいけないといいましたが、冬の王さまは耳をかしませんでした。その結果、大変なことが起こってしまいますが……。四季のサイクルの大切さや自然のすばらしさがストレートに伝わってくる絵本。色彩ゆたかなイラストが賑(にぎ)やかで楽しい気持ちになります=3歳から(フリードランド文、サットン絵、さくまゆみこ訳、1980円)

★「ぼくは王さま」(理論社)

 王さまは、あそぶことも、いたずらすることも大好きで、まるで子どものようです。この本には、そんな王さまのおはなしが4話入っています。「ぞうのたまごのたまごやき」で、王さまは王子さまが生まれたお祝いに国じゅうの人たちに自分が大好きなたまごやきをごちそうしようと思いつきました。家来たちにぞうの大きいたまごを探してくるように命じたのですが……=小学校中学年から(寺村輝夫作、和田誠絵、1320円)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

☆「ある星の汽車」(福音館書店)

 月明かりの下、動物たちを乗せた汽車が大地を走っていきます。乗り合わせた男の子が車内を見回すと、植木鉢を抱えたドードーのおじさん、青いコートのブルーバック、イリオモテやツシマから来たヤマネコも。乗客が降りる駅名の4桁の数「1681」「1800」にはたと気づきます。そう、これは地球のあらゆる生物を乗せて過去から未来へ走る汽車。1匹、また1匹と下車した後のうつろな席。どこまで、いつまでいっしょに乗れるのか。生物の共生と絶滅について、感じ考える絵本。月光と繊細な鉛筆画が、動物たちに深い表情を与えています=5歳から(森洋子作、1980円)

★「ヨセフのだいじなコート」(フレーベル館)

 ヨセフのコートは、あちこち穴あきツギだらけ。そこでジャケットに作り替え、それも古くなるとチョッキに……ついには? いろんな素材のコラージュとページの穴でコートの変遷を見せる、穴とツギがポイントのしかけ絵本。何もなくなっても豊かな記憶とアイデアがある。ちりばめられた格言もゆかい=3歳から(タバック作、木坂涼訳、1980円)【絵本評論家 広松由希子さん】

☆「やさしいカタチ」(彩流社)

 本を開くと、あちこちにでこぼこがある椅子のようなものが、目にとびこんでくる。それぞれ独特な色とカタチだが、なんだろう? ページを繰るうちに、これは重い障がいをもった人が使う姿勢保持装置だとわかってくる。この装置を作るのは「トラさん」。ほとんどの利用者とは言葉のやりとりができないので「わからない」ことだらけなのだが、プロの目で見ながら、一人ひとりに少しでも楽なやさしいカタチを考えて作っていく。岩手県にある福祉施設を舞台にしたノンフィクション写真絵本=9歳から(大西暢夫著、2420円)

★「おおきいツリー ちいさいツリー」(大日本図書)

 ウィロビーさんの屋敷に運び込まれた見事なクリスマスツリーが天井につっかえた。そこから話が始まって、一本のモミの木の先端がカットされるたびに、小間使い、庭師、クマ、キツネ、ウサギ、ネズミの手へと順繰りにわたっていき、みんなにクリスマスの楽しさをもたらす。しかもネズミが小さなツリーを持ち込んだのは、どこだと思う? 幸福感あふれる絵本=4歳から(バリー作、光吉夏弥訳、1540円)【翻訳家 さくまゆみこさん】

☆「いつもの あさの あいうえお」(あかね書房)

 なにげない大切なひととき。50音で1ページずつ綴(つづ)られるその時間は、朝、昼、夜が当たり前に流れていく様子を優しく映し出します。心地よく響く言葉は、小さな子どもに語りかけるように温かく心に染み渡り、柔らかいタッチの絵にたっぷりと取られた余白は、幸せな風景を静かに浮かび上がらせます。このささやかな日常のなんと愛(いと)おしいことでしょう! 大切な人への贈り物や、自分自身への心の糧に。心に寄り添うギフトブックです=3歳から(うえだまこと作、2200円)

★「とびきりすてきなクリスマス」(岩波少年文庫)

 エルッキは、もうすぐやってくるクリスマスを思うだけで胸がはちきれそうなほど幸せでした。ところが、一番上の兄の乗った船が行方不明だという知らせが届きます。兄の無事を祈り家族がクリスマスどころではない中、エルッキは「とびきりすてきなクリスマス」を迎えるために奮闘します。与えられるのではなくおしみなく差し出すことで生まれる幸せを、そっと教えてくれる物語です=小学校2・3年から(キングマン作、山内玲子訳、748円)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】=朝日新聞2025年11月29日掲載