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三体人がクルー! 世界的なベストセラーSF「三体」特集

写真はイメージ

 中国で2008年に単行本が刊行されて以来、現在までに世界での売上2900万部を誇るベストセラーSF『三体』(早川書房)。オバマ前米国大統領やフェイスブックCEOのザッカーバーグが愛読したことでも話題になり、著者の劉慈欣は同作で、アジア人作家として初めてSF界最大の賞・ヒューゴー賞に輝きました。三部作のうち、日本では2019年に第1部が翻訳され、翻訳SFの単行本としては異例の13万部(電子書籍を含む)を売り上げています。その続編である第2部『三体Ⅱ 黒暗森林』が、6月18日に発売されました。好書好日ではその魅力を、インタビューや書評で紹介していきます。

中国発の本格SF「三体」劉慈欣さんインタビュー 科学の力、人類の英知を信じて執筆

「三体」書評 中国人作家による壮大なSFの始まり

謎めいたタイトル「三体」とは?

 「三体」とは、天体力学の「三体問題」に由来しています。すなわち質量がほぼ同じ三つの物体があるとき、それらは互いの引力を受けながら予測不能の運動をするというもの。第1部でその存在が明かされる「三体世界」は、太陽がこの三体運動によって出現する惑星です。地球のように規則正しく昼夜が巡る「恒紀」があれば、いったん太陽が沈んでしまえば次にいつ昇ってくるか分からない極寒の「乱紀」があり、その周期は誰にも予測できません。

 乱紀が近づくと三体人は脱水してうすっぺらくなり、体をぐるぐる巻きにして倉庫の中で恒紀を待ちます。長い冬眠の後に「春」がやってくると、湖で体をふやかして仮死状態から元に戻ります。脱水中に指をネズミにかじられて――など、時にユニークに描かれる三体人ですが、過酷な自然環境によって安定した文明が築けないことに苦しみ、やがて地球の存在を知ります。そして高度に発達した科学技術で宇宙艦隊を編成し、地球めざして出発するのです。

 第2部の「黒暗森林」は、450年後に地球に到達すると予想される三体人に人類がどう対抗するか、というところから物語が始まります。第1部よりも鮮明に描かれるのは、宇宙文明の宿命とも言うべきもの。「生存は文明の第一欲求である」「文明はたえず成長し拡張するが、宇宙における物質の総量はつねに一定である」。そのことわりを真に理解したとき、目の前に「黒暗森林」が浮かび上がってきます。

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