ほぼ最低賃金で清掃の仕事に就いたシングルマザーが、作家になる夢を叶えた回想記です。予期せぬ妊娠とパートナーとの別離によって著者が陥った貧困はまさに蟻地獄。煩雑な手続きを伴う公的な補助は、わずかな収入増で減額されます。入居できる家賃のアパートは母子の健康を害する環境でした。富裕層の家を回る清掃の仕事は、まるで幽霊になったよう。人としての尊厳どころか、存在すら無視されます。
そんな日々を細部まで克明に描き、現代の貧困の現実を伝えます。著者の支えは一人娘のミアと、日々の暮らしをつづるSNSやブログでした。家族の援助も得られず一人で闘ってきた彼女が、一歩を踏み出す瞬間は快哉を叫ばずにはいられません。
定価:本体1800円+税 双葉社 03・5261・4818(営業)