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雑誌「月刊コンビニ」 岐路の業界、前向きアイデアで

 新型コロナの蔓延(まんえん)により、多くの家庭や企業で苦しい経済状況が続いている。これからは7割経済の時代などと言われているらしい。旅行関連や飲食業、小売業など、うっかりすると密になりやすい業態はとくに厳しいようである。

 そうした状況下で雑誌は何を書いているのだろうか。『月刊コンビニ』という雑誌を見つけたので読んでみた。コンビニエンスストアの業界誌で、最新の9月号で通巻241号というから、20年ぐらい続いているようだ。

 9月号の特集は《「おうち時間」を訴求する》。外消費から内消費へのトレンドをとらえた戦術が練られている。ハロウィーンでは自宅でお菓子や料理や飾り付けをSNSに投稿する需要が増えそうだとか、クリスマスは手作り需要をとりこめとか、年末は帰省できない層が増えるのでお歳暮の需要は高まるだろう、おせち料理は大勢で集まらないので小さいサイズの予約が増えるだろうなどなど、きめ細かな読みと工夫を重ねながら売り上げを積み上げていく小売業の日々の努力をあらためて認識させられるようだ。

 始業式や連休、敬老の日といったイベントに合わせた週ごとの発注戦略カレンダーまで載っているのは参考になりそう。

 さらにそうした目先の品揃(しなぞろ)えだけでなく、業態としてどう時代に合わせて変化していくのかという問題にも誌面が割かれ、行動自粛が今後も続くと予想されるなか、ふらっと立ち寄る客よりも固定客にシフトし、飽きさせない工夫を凝らした売り場作りが必要と説く。今話題の大手チェーンによる共同配送実験のリポートも載っていた。

 面白かったのは特別企画として、地方や郊外で「買物難民」の高齢者をサポートする移動スーパーの社長インタビューが載っていたこと。意義のある取り組みだと思うが、そのなかで社長がさらりと、自分たちが儲(もう)かることを目的としていません、と断言している。“最終的に利益が出たらいいな”というビジネスモデルなのだと。

 7割経済の時代は、金儲け至上主義から脱却し、社会貢献の時代にシフトせざるを得ない時代なのかもしれないと、そんなことを思った。

 高齢者が半数以上を占める別荘地で赤字が累積していた店舗を黒字化させた事例など、こんな時代にあっても悲観的な記事がないことにほっとする。本部と加盟店の間の軋轢(あつれき)について触れてあるのも良心的だ。

 自分には直接関係のない業界の雑誌だったが、みんなでがんばろうという気持ちになった。=朝日新聞2020年9月2日掲載