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吉﨑雅規「幕末江戸と外国人」 江戸の人々が見た幕末の外国人

 幕末、開港した横浜や函館などだけでなく、江戸にも外国人が住み始めた。どこに?

 寺だ。アメリカは麻布の善福寺に、イギリスは高輪の東禅寺に、フランスは三田の済海寺の一画に公使館や総領事館を置いた。幕府は朝鮮通信使などの例を踏まえ、滞在施設の格を決めていた。敷地は広く、「御殿」のようだった。だが寺では次第に賽銭(さいせん)や法事が減り、先祖代々の位牌(いはい)を他の寺に移す大名も現れる。近くでは酔っ払うイギリス人が問題となり……。

 江戸の人々は外国人とどうつきあったのか。様々な史料に基づいて描くのが、吉﨑雅規著『幕末江戸と外国人』だ。著者は港区立港郷土資料館などを経て、今は横浜開港資料館の調査研究員。

 外国人の警備を命じられた武士は、攘夷(じょうい)思想の下で「日本を襲ってくるはずの外国人」を「日本人の襲撃から護(まも)る」ジレンマを抱えた。江戸の風俗には早くも洋風化の兆しが現れたとの指摘もある。オールコックやサトウら外交官が見た日本を、江戸の側から照らし返すおもしろさだ。(石田祐樹)=朝日新聞2020年10月3日掲載