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「女性の世界地図 女たちの経験・現在地・これから」 女性が被る差別を可視化

『女性の世界地図』から

 女性の権利の話をすると、「いまは男も大変」とか「むしろ女の方が優遇されている」などと、男女問わずの反論が返ってくる。その認識は明らかに間違っているのだが、彼らの考えを変える説明をするのはいつでも難しかった、この本が出るまでは。

 女性が被っている差別の内容とその地理的な分布状況が、世界地図と数字で一目瞭然になっている。例えば「避妊」の項目では、多くの女性が不安定な避妊法しか享受できないにもかかわらず、避妊手術の負担は男性の10倍近くかかっていることがわかる。これを他の項目のデータと併せて眺めると、男性が妊娠を他人事(ひとごと)と考えていること、女性の身体や主体性の世界的な軽視、貧困や病気など、避妊の失敗が女性にもたらしうる不利益に対する世界的な無関心が見えてくる。

 中学生の姪(めい)に貸したい本だが、その前に大学生の息子、いや、女性に関する発言がかなり危ういわが父に読ませるべきだろう。=朝日新聞2021年2月20日掲載