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「地方を生きる」など注目の新書5選(朝日新聞2021年2月20日掲載)

『地方を生きる』

 生まれ故郷の福島県いわき市小名浜で「ローカル・アクティビスト」として活動する著者がこの10年間の活動を振り返る。20代に海外移住した経験が地元を見直すきっかけになったことや、「地域のため」がもてはやされる中でも「自分が楽しむこと」が大事だと説く。
★小松理虔著 ちくまプリマー新書・946円

『晩年のカント』

 カントの晩年を、半世紀余りその著作を読んできた哲学者がたどった。「『わかった』と決めてかかる独断論と『わからない』と決めてかかる懐疑論の狭間(はざま)にみずからを据えて、わずかもぶれることなくその地位に留まり続けた」カントに「知的誠実性の極致」を見ると哲学者は書く。
★中島義道著 講談社現代新書・990円

『あの人はなぜ定年後も会社に来るのか』

 認知行動療法を専門とする著者が、定年後の不安や孤独感の正体について明らかにしていく。「認知」つまり「考え方のクセ」を把握し、感情と向き合う「コツ」を知れば、老後を充実させることができると説く。コロナ禍で寂しさを感じる人たちへのヒントにも。
★中島美鈴著 NHK出版新書・935円

『ステップファミリー』

 東京都目黒区で女児が虐待死した事件では、継父の異常な「しつけ」が明らかになった。継親子関係がある家族(ステップファミリー)はどうあるべきか。親の離婚・再婚を経験した若者らへの調査を基に、従来型の「ふつうの家族」と違う、子どもを中心に据えた家族像を示す。
★野沢慎司、菊地真理著 角川新書・990円

『空間は実在するか』

 著者は物理を教える予備校講師。難解な相対性理論をピタゴラスの定理でかみ砕き、グラフでシンプルに解説。私たちが自明のものだと考えている「空間」と「時間」は、幻影(イリュージョン)だと論じていく。時空の不思議を哲学や生物学の知見も交え考察する。
★橋元淳一郎著 インターナショナル新書・924円=朝日新聞2021年2月20日掲載