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チョ・ナムジュさん「ミカンの味」インタビュー 中学女子の悩みリアルに

チョ・ナムジュさん=Munhakdongne Publishing Group提供

 韓国社会の理不尽極まる男女差別の実態を、ありふれた一人の女性の半生を通して暴いた世界的ベストセラー『82年生まれ、キム・ジヨン』。その著者による新作小説は、女子中学生4人組の青春群像劇だ。

 映画部で出会ったソラン、ダユン、ヘイン、ウンジ。友人関係や家庭の問題などそれぞれ悩みを抱えている4人は、高校受験を控えたある日、旅先の済州島で一つの誓いを立てる。それは、4人が今後競争社会を生きていく上で、将来を左右する大きな決断なのだが……。各自の思惑がミステリー仕立てになって物語を引っ張っていく。

 念頭にあったのは、自身の娘のことだという。「どうせ過ぎてしまうこととして軽んじられがちなこの時期を、それ自体の重さと意味で見つめたかった。彼らの悩みをリアルに、悲観したり貶(おとし)めたりしないで書こうと思った」。女児より男児を重んじる家父長制社会で、幼い頃から諦念(ていねん)を身に付けざるを得ない彼女たちの姿を、完熟を待たずに出荷されるミカンに託した。

 元々、放送作家として社会派のテレビ番組制作に携わっていたが、出産後に育児と両立できなくなり、小説家に。『82年生まれ』の刊行後、韓国では雇用や賃金の性差別をなくし、保育制度を補完する法案が発議され、「82年生まれキム・ジヨン法案」と呼ばれた。「当然で些細(ささい)なこと、甘受すべきことと思われていた女性たちの問題を、公の議論の場に出す小さなきっかけになった」と振り返るが、それで社会が変わったかどうかは懐疑的という。

 「女性たちが絶望し、排除され、殺害されたというニュースを見るのが今もとてもつらい」。声を上げ続ける女性たちの背中を押すために、筆を執る。(文・板垣麻衣子 写真はMunhakdongne Publishing Group提供)=朝日新聞2021年4月24日掲載