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『「お金の流れ」がたった1つの図法でぜんぶわかる 会計の地図』 会計初心者を株式市場の最先端に導く

 会計のテキストは、企業の財政状態、損益、現金の流れを示す「財務三表」から始まるのが一般的。だが、本書は1枚の「会計の地図」で財務三表の要点と関係性が整理され初心者にも分かりやすい。

 株式市場では、店舗や工場などの財務三表に載る資産の他、ブランド力や人的資本といった形のない資産、会社の将来性やリスクも含めて評価され時価総額が決まる。本書では時価総額から、財務三表に載る資産を引いた差額を「のれん」(正確には、時価総額―純資産=自己創設のれん)とみなす。するとこののれんを通じて、会社の現在の姿と将来の展望が1枚の地図上でつながるのだ。

 企業が存続していくためには毎期の利益の確保は重要。だが短期的に利益が出ても環境や社会に悪い影響を及ぼす企業は市場で評価されない。他方で、女性管理職比率の上昇などすぐに利益につながらない要素が市場で評価されてのれんを創出している調査結果も紹介している。

 実は、これは近年プロの機関投資家が行うESG投資(環境・社会・ガバナンスを意識した投資)の視点。たった1枚の地図だけで会計初心者を株式市場の最先端まで導く本書は実に鮮やかだ。=朝日新聞2021年5月15日掲載