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ユージン・スミス賞写真家 福島10年伝える写真集制作

原発事故の影響で廃棄された「あんぽ柿」となる原料の柿=2014年、福島県伊達市(写真集から)

 福島を拠点に、東日本大震災後の被災地を撮り続け、昨年「ユージン・スミス賞」を受賞した写真家の岩波友紀さん(44)が、これまでの10年の作品をまとめ写真集を出版する。2011年から続けてきたシリーズの集大成で、現在、制作費をクラウドファンディングで募っている。

 写真集のタイトルは「Blue Persimmons」。「青い柿」という意味で、原発事故の影響で廃棄せざるを得なくなった大量の福島特産のあんぽ柿が、ブルーシートで覆われ山のように積み上がった放射性廃棄物と重なって見えたことが由来だ。

 岩波さんは、11年に発生した大震災を東京の新聞社の写真記者として取材、14年末には被災地に向き合い続ける選択をして退職し、福島県会津美里町に移住した。福島を中心に、陸前高田市(岩手県)や石巻市(宮城県)でも撮影を続けてきた。

 16年に大熊町で撮影した写真では、一面の菜の花畑の中で女性が写真を撮っている。空の雲と黄色のコントラストが美しく、どこか懐かしさを感じさせる。一方で、同じ年に同町で撮影された写真は、緑で覆われた住宅近くを防護服姿の女性が歩いている。もはや住めないほどに変わってしまったふるさとの風景だ。

 岩波さんは、一連の作品を19年、東京と大阪での写真展で展示、20年には水俣病のドキュメンタリー写真で知られる米国の写真家の名前を冠した「ユージン・スミス賞」を、日本人として初めて受賞した。

 6月出版の写真集は、その後の作品も含め208ページの予定。「決めつけや偏ったイメージではない、生の福島の現実を知ってもらいたい。今回で一つの区切りになるが、これからも福島の姿を撮り続けたい」と話している。

 クラウドファンディングは30日まで募集、支援額は千円から。8千円以上で完成した写真集、額によって特産のあんぽ柿なども送られる。URLはhttps://camp-fire.jp/projects/view/391170。

(関田航)朝日新聞デジタル2021年05月25日掲載