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100年前のフィルム修復、田山花袋の映像初確認 郡山

久米正雄=1924年4月24日、郡山市提供

 福島県郡山市ゆかりの作家久米正雄(1891~1952)が撮影した映像フィルムの修復に成功し、久米をはじめ作家の田山花袋(かたい)や里見らの姿が確認された。市が26日に発表した。約100年前のモノクロフィルムで、修復に携わった研究者は「田山の映像が初めて確認され、近代文学史上とても貴重な資料だ」としている。

 復元したフィルムは市が1998(平成10)年に久米の親族から購入した18本のうちの2本。久米が撮影したとみられ、経年劣化によるフィルムの固着などで全容は確認できていなかった。

 同市と文化振興などの協定を結ぶ横浜市立大が昨年12月から調査などしていた。手作業で補修などをしてデジタル映像に修復した。その結果、1本は24(大正13)年4月24日に雑誌社の特集号で企画した遠足の際に主に久米が撮影した。この遠足には田山を中心に計16人の文学者が参加したという。約50秒の中には久米のほか、50代の田山が笑顔で帽子を取ったり、里見が2人の子どもたちと渡し船に乗ったりするシーンが映っていた。

 もう1本は24年の夏ごろに東京側の多摩川河畔で撮影された約16秒。割烹(かっぽう)旅館の浴衣姿で屋形船に乗り込む男女が映っている。久米らしき人物が登場するが、詳細については今後調査を続けるという。市では6月中にこおりやま文学の森資料館で公開する予定。

 久米の映像フィルム18本のうち6本は劣化前の75(昭和50)年に焼き直しされていた。これらには芥川龍之介や菊池寛、徳田秋声らが映り、同資料館で適宜公開している。フィルムの劣化は予想以上に進んでいるが、市は同じく全容を把握できずに残る10本の修復も検討する。

 調査をした横浜市立大の庄司達也教授(日本近代文学)は「当時の文壇で中心的存在だった田山の映像資料が初めて確認された。多摩川での観光や風俗などの研究資料としても高い価値がある。残るフィルムにもこの時代の文学者の新たな映像があるかもしれない」と話した。

(見崎浩一)朝日新聞デジタル2021年05月27日掲載