1. HOME
  2. トピック
  3. 穂村弘さんのデビュー歌集「シンジケート」が新装版に 31年前に自費出版

穂村弘さんのデビュー歌集「シンジケート」が新装版に 31年前に自費出版

 歌人の穂村弘さん(59)が31年前に自費出版した第1歌集『シンジケート』の新装版が5月下旬に講談社から出版され、まもなく重版が決まった。人気画家のヒグチユウコさんが表紙の絵を描き下ろし、かつての刊行時に激賞した作家の高橋源一郎さんが新たに解説を寄せている。

 穂村さんは1986年、連作「シンジケート」で角川短歌賞次席に。受賞者は俵万智さんだった。

 「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」

 ポップな口語短歌は上の世代から批判を浴びた一方、若手歌人たちに強い影響を与えた。

 91年4月、この連作などを収めた『シンジケート』を朝日新聞の文芸時評で取り上げた高橋さんは、〈穂村弘は新しい「言文一致」で書こうとしている〉〈俵万智が300万部売れたのなら、この歌集は3億部売れてもおかしくないのに売れなかった。みんなわかってないね〉と書いた。新装版の解説には、〈『シンジケート』には、「あの時代」が閉じこめられているのだ。軽く、明るく、テレビやゲームのCMのことばが飛び交って、でも、どこかちょっとだけ不安な、あの頃が〉とつづっている。

 終バスにふたりは眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて

 この歌集に収めた歌が作られたのは85年から90年にかけて。穂村さんは言う。「これからどんどん盛り上がって、世の中がきらきらしていくんだという空気感があった。一方で、『終バス』の歌には甘く幸福なものの中に破滅の匂いもある。未来を先取りした形で歌に出たのだと思う」(佐々波幸子)=朝日新聞2021年6月2日掲載